『理念と経営』WEB記事
特集
2026年3月号
ブランドは中小企業にとって大きな武器になる

中央大学名誉教授 田中洋 氏
「ブランド」と聞くと、老舗や大企業の専売特許のように感じる読者も多いのではないだろうか。しかし、ブランド戦略論の第一人者である田中洋氏は、「ブランディングは、中小企業こそ取り組むべき戦略である」と説く。
ブランドは顧客の想像力に働きかける
ブランドというのは、単にマークやシンボルのことだけを言うのではありません。私はブランドを「商品や企業に対して顧客が持つ認知システム」と定義しています。例えば、スターバックスやマクドナルドと聞くと瞬時に、ああ、こういう雰囲気で、こんな商品を提供している店だと頭の中でさまざまな情報が想起され、それが一つの像を結びます。このように顧客の想像力に働きかけるのがブランドなのです。
ブランド力は売り上げ増加の要因となります。また、人材採用においても、ブランド力がないよりある企業のほうが、断然有利なのは言うまでもありません。だから、自分のところは中小企業で、周囲もブランディングなどやっていないというなら、逆にこれを大きなチャンスと捉えてください。他社に先駆けてブランド戦略に取り組めば、それだけ競争優位性を確立できる可能性が広がるからです。
アメリカでは、ブランディングは大企業がやることという考え方はありません。アマゾンやマイクロソフト、アップルなどが現在のように確固たるブランドを築いたのは、いずれも、創業間もない頃からブランド力を高めることを意識した経営をしてきたからです。日本ではソニーがそうでした。創業者の盛田昭夫氏は、1955(昭和30)年にトランジスタラジオを売り込むために渡米した折、ある時計会社から10万台の注文を受けました。
しかし盛田さんはこのオファーを断ってしまいました。なぜならば、そのオファーは、相手先のブランドで売らせてくれ、というものだったからです。つまり、盛田さんは目の前の売り上げよりも、自社ブランドの価値を高めることのほうを優先したのです。
ブランディングは経営戦略の一環
では、どうやってブランドをつくればいいのでしょうか。一般的にブランド戦略というと、広告やプロモーションなどのコミュニケーション戦略にばかり目が行きがちですが、それだけでは不十分です。BMWやメルセデス・ベンツは安売りフェアをやったり、販売店に「のぼり」を立てて顧客を呼び込んだりしません。たとえそれで売り上げが一時的に伸びたとしても、高級車というブランド価値が棄損されてしまうからです。
ブランドは「売れるための条件」づくりとも言えます。ブランドを作れば商品が売れるのではなく、ブランドを作ることによって売れるための条件が整うのです。最初に行うべきは経営戦略です。自分たちは何者で、誰にどんな価値を提供したいのか、事業テリトリーはどこか、どんな経営資源を持っているか、強みは何かといった自社のアイデンティティーを確認する。その上で、どこにどのようなブランドを建てるのかという意思決定をするのです。単に目立てばいい、売れればいいというのではなく、このように顧客から認知してほしいという意図の下に、顧客に訴えるのがブランドです。そのためには見せ方だけでなく、時にはビジネスモデルや社員の働き方も変えなければならなくなります。
それができたら次は、誰(顧客9に対して、どのような価値を提供すべきか、というマーケティング戦略の立案。その次が、誰にどのようなメッセージを届けるか、というコミュニケーション戦略の企画・実行です。ブランド戦略は常にこの3層から成っています。
取材・文 山口雅之
写真提供 本人
本記事は、月刊『理念と経営』2026年3月号「特集」から抜粋したものです。
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