『理念と経営』WEB記事
夢のBATON
2026年3月号
「生き物としての」 基本に立ち返れば、 “本来の道”が 自ずと見えてくる

JT生命誌研究館名誉館長 中村桂子 氏
各分野の第一人者が次世代へ贈る珠玉のメッセージを紹介する。第1回は「生命誌研究」の開拓者として知られる中村桂子さんが、長年の研究で培った知見と、未来へ語り継ぎたい思いを伺った―。
「私」の中にある40億年の歴史
「生命誌」という知の取り組みがある。生きものがたどってきた40億年にもわたる壮大な歴史を読み解き、人間も自然の一部であり、あらゆる生命とつながっているという視点から、生き方や社会のありようを考え直そう、という試みである。
その提唱者の中村桂子さんは、「『私』の中には40億年の歴史が入っており、それを基本に『私』の毎日の活動がある」と記す。
だからこそ「『私たち生きもの』の中の私」という思いで生きること、その大切さと豊かさを、さまざまな著書で語っている。
「私は生命誌という言葉を考え出すまで10年くらい悩みに悩んでいたんです。やるべきことはわかっているけど、言葉が思いつかない」
ところが、ある時、友人と電話で議論していて頭にパッとこの言葉が浮かんだという。
「生命誌だけじゃなく、生命誌研究館という言葉も一緒に出てきたんです。研究館というものがあれば私が考えていることができると思いました」
JT(日本たばこ産業)の支援を得て、1993(平成5)年に大阪府高槻市にJT生命誌研究館を設立した。エントランス・ホールには生命誌の考え方が一目でわかるように、40億年前の生命の誕生からの多様な生きものの歴史と関係を現した扇型の「生命誌絵巻」が掲げられている。
「この研究館は英語で言うとリサーチ・ホールなんです。音楽を演奏するホールと同じ、です」
科学の研究は論文で完結するが、生命誌では論文は音楽の楽譜のようなものだ、と中村さんは言う。
「楽譜は演奏してみんなで楽しむためにあるように、研究館は訪れる誰もが研究の成果を楽しめる場です」
来館者の感想で嬉しかったのは、たとえば作家の高村薫さんや日本画家の堀文子さんの「ここへ来ると空気が違う」「生きているという感じがする空気ね」というものだったそうだ。
「私は、そういう空気をつくりたいんです。もしできることなら世界中がそうなってほしいと思います」
その空気を言葉で表せばどんなものでしょう? そう訊くと、
「居心地の良さー。生きものとしての居心地の良さでしょうか」
と、言うのである。
1%でもいいことがあれば、動く
2020(令和2)年、生命誌研究館の館長を辞し、名誉館長になった。すると以前とは別の忙しさが出てきたそうだ。
「全国からお声をかけていただいて出掛けることが多くなりました。実感として、この間に、急速に生命誌が広がったと思います」
取材・文 鳥飼新市
撮影 後藤さくら
本記事は、月刊『理念と経営』2026年3月号「夢のBATON」から抜粋したものです。
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