『理念と経営』WEB記事

従業員の意識改革が経営の一丁目一番地

ラニイ福井貨物株式会社 代表取締役CEO 藤尾秀樹 氏

入社直前に知らされたのは、自己資本比率4%、赤字続きの「倒産予備軍」という現実だった。婿養子として老舗運送会社に身を投じた経営者は、5Sと意識改革から再建に着手する。戦略より先に人と向き合った、企業再生の実像に迫る。

歴史ある、いい会社だと思っていたが……

福井市に本社を置く、ラニイ福井貨物株式会社の5代目社長である藤尾秀樹さんは、「僕は婿養子最強説なんですよ。これはさまざまな指標や周りの経営者の話、経験から言えます」と、笑顔を見せた。

大学を卒業して大手製薬会社に就職し、社内結婚した。妻は福井貨物自動車(当時)の創業家の三女だった。三姉妹で、姉たちはすでに嫁いでいた。

「3代目の義父が若くして亡くなっていて、2代目の祖父が『結婚するのはいいけど、会社を継ぐ気はないか』と訊くんです」

営業として実績も挙げ、仕事も面白かった。その申し出は丁重に断った。しかし、その後も祖父は、福井に妻と帰省する度に「うちにこないか」と誘い続けたそうだ。40歳を前にした時、藤尾さんは、新しいことに挑戦するのも悪くないかもしれないと、婿養子になることを決意したという。

名字も「藤尾」に変えた。入社は2011(平成23)年1月。39歳だった。

「福井県のトラック協会の会長を歴代務めている歴史ある会社だと聞いていたので、いい会社なんだろうと思っていたんです」

ところが、入社を前に東京の家に送られてきた取引銀行のレポートを読むと、そこには自己資本比率4%、長年赤字続きで「倒産予備軍」と書かれていた。

「えっ! と驚きました。でもすぐに、もう後戻りはできないと思い直しました」

創業は1928(昭和3)年である。県内外に15の支店を持ち、トラックは300台ほどあった。当時、売り上げも50億円という会社だ。なのに、なぜ赤字なのだろうか。

「後で知ったことですが、数字に対する意識が低かったというか、しっかり管理をしてなかったんですね。まさに自転車操業です。月々の給料や経費を払うために借金をし、月末の入金で返済していたんです。溜まった借金が60億くらいありました」

何より驚いたのは、社内の汚さだったそうだ。ごみやたばこの吸い殻が散らばっている。トラックも同じで、きれいな車もあったが、運転席にパン屑や吸い殻が散乱している車も多かった。

前職では考えられなかったが、運送会社では普通なのかな、と思ったという。

もっと運送業界のことや自社のことを知りたいと考え、トラックの助手席に乗って仕事に同行するようにした。ドライバーたちといろんな話ができた。そんな中でわかってきたことは、車をきれいにしているドライバーは事故がない、ということだった、と話す。

取材・文 中之町新
撮影 編集部


この記事の続きを見たい方
バックナンバーはこちら

本記事は、月刊『理念と経営』2026年3月号「逆境!その時、経営者は…」から抜粋したものです。

理念と経営にご興味がある方へ

SNSでシェアする

無料メールマガジン

メールアドレスを登録していただくと、
定期的にメルマガ『理念と経営News』を配信いたします。

お問い合わせ

購読に関するお問い合わせなど、
お気軽にご連絡ください。