『理念と経営』WEB記事

「仕方ない」と最初から諦めず、やってみよう

一般社団法人ラ・バルカグループ/
株式会社QUON(クオン)チョコレート 代表 夏目浩次 氏

全国に47店、61拠点を展開するQUONチョコレート(愛知県豊橋市)。ここで働く従業員約800名の約6割が身体や心や発達に障がいのある人たちだ。夏目代表はこの取り組みを「社会が成長していくために必要なアクション」と述べる。

特別なことをしているつもりはない

店構えも商品パッケージも、とてもおしゃれな「QUONチョコレート」というショップが、最近、全国各地で人気を博している。見掛け倒しではなく、チョコレートマニアも唸らせる、高品質のカカオを使った商品は、毎年開催される百貨店のバレンタインフェアでも好評だ。

おいしくておしゃれなQUONチョコレートには、もう一つ、大きな特徴がある。商品の多くを障がいを持つ人々が作り、さらに、その給与が「高給」であることだ。代表の夏目浩次さんは言う。

「多様な人々を採用していることを隠しはしませんが、そこばかりをアピールする気もありません。社会貢献ブランドなんて言われると、ちょっと違うんだけどな、と思います。僕たちは、一流のチョコレートブランドになりたいんです。おいしくて美しいチョコレートを、たくさんの人に楽しんでいただくために、僕も含めて多様な人々が力を合わせて進んでいるだけ。社会貢献という側面は弊社の一面に過ぎません」

福祉施設における障がい者の労働対価は月に1万円前後が一般的とされる。QUONチョコレートでは、作業内容によってバラツキはあるが、5万~18万円。この金額は福祉業界をよく知る人であればあるほど驚く高い給与水準だ。これは、自社の給与体系に対する、強い思いなくして実現不可能なはずである。

「もちろん、ここまで苦労はありましたが、健常者と同額にまではなっていませんから、まだまだです」

社会貢献の側面について「そこばかりをアピールする気もない」と言うのは、社会の理不尽な当たり前に疑問を抱き、闘ってきた夏目さんだからこそできる、静かなファイティングポーズなのだろう。理不尽だと思っても「仕方ない」と最初から諦めてしまったら、そこにあるかもしれない可能性を潰すことになる。だから、夏目さんはもがきながら、チョコレートという得がたい商材を探し当て、そこに懸けてきた。

大学院時代に取り組んだテーマは「駅空間における移動容易性」。

「地元の愛知県豊橋市の市議会議員を長年務めた父の背中を見て、信用金庫に勤務しながら、僕も政治家を志して活発に動いていました。地域のバリアフリー化やユニバーサルデザインの実現を目指しましたが、どうにも足並みが揃わなくて。当時の僕は忍耐力に欠けており、次第にコミュニティーから足が遠のいてしまった。おまけに本職のほうでは、僕から見ると耐えられないようなパワハラの横行に抗議しても、誰も動かないことに腹が立ち、辞表を提出しました。僕はおかしいことがあるのに“仕方ない”と切り捨てたり、放置したりするのが許せない性格なんです。同僚だった妻と出会えたのが、唯一の良かったこと(笑)」

取材・文 中沢明子
撮影 亀山城次


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本記事は、月刊『理念と経営』2026年2月号「人とこの世界」から抜粋したものです。

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