『理念と経営』WEB記事

“社長の分身”が 見守る、 人が価値を生む現場

旭鉄工株式会社 代表取締役社長 木村哲也 氏

赤字続きの会社を立て直すため、改革を断行した木村社長。現在は自らの分身「AI キムテツ」を育てながら、現場にAI 活用の文化を根付かせている。トヨタ仕込みのカイゼン精神と最先端デジタル技術を融合させ、現場改革に挑む木村さんの挑戦に迫る。

変化を恐れる会社にAIを根付かせた改革

今回の取材に際し、旭鉄工の代表取締役社長、木村哲也さんに質問事項を送ったところ、数日後に回答が届いた。取材の日、木村さんはAIが回答のたたき台を作ったと明かした。

「私は、自分のクローンにあたるAIキムテツを育てています。ベースとして私の著書2冊を読み込ませていて、さらに日々新しいデータを追加しています。この回答は、AIキムテツが出してきたものを確認して、私がエピソード追加したものです」

トヨタ自動車で21年勤務した木村さんが、トヨタ系列の自動車部品メーカー、旭鉄工に転籍したのは2013(平成25)年。当時、変化を嫌う社風な上、なおかつ赤字続きだった同社で、木村さんは「無駄なことはしない」「小さな改善を積み重ねる」「とにかくやってみる」という思いを込めた「わりきり・やりきり・おもいきり」を哲学に掲げ、立て直しに挑んだ。

「改善は0・1秒とか0・01秒の積み重ねなんですよ。小さな改善を積み重ねれば大きな効果になるので、仕入価格の見直しなど、まずは身の回りで気になることからどんどん手を付けました」

同社の変革に大きな役割を果たしたのは、自社開発のIoTシステム「iXacs」を活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。「iXacs」による製造ラインのモニタリングなどで電力消費を42%削減。さらに業務の合理化、効率化を推し進めた結果、同じ売り上げで約10億円の利益の上乗せを実現する。

このDXの過程で、AI活用が始まった。同社では改善のノウハウを共有するために「横展アイテムリスト(ノウハウ集)」を作成していた。しかし、リストが膨大になるにつれて使い勝手が悪くなってきたため、「ノウハウを収集して簡単に引き出せるシステム」として、「ChatGPT」をカスタマイズした「カイゼンGAI」を開発する。このAIによって、例えば「電力を削減したい」と伝えると、該当する回答が瞬時に提示されるようになった。

取材・文 川内イオ
写真提供 旭鉄工株式会社


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本記事は、月刊『理念と経営』2026年1月号「特集2」から抜粋したものです。

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