『理念と経営』WEB記事

元請け消滅、活路は 顧客の声にあった

株式会社ハタメタルワークス代表取締役 畑敬三 氏

主要取引先の吸収合併により、危機にさらされた同社。打開できたのは地道な営業行脚と、銅加工の需要に対応した畑さんの実行力ゆえだった。

一社依存の下請けだったことが後に危機をもたらす

銅は人類が利用し始めた最も古い金属である。溶解や鋳造がしやすく、すでに紀元前7、8000年頃から自然銅が使われていたという。

紀元前4000年半ばには錫との合金である青銅をつくる技術も生まれ、さまざまな器や装飾品、武器などに使われてきた。日本でも弥生時代の古墳から銅鉾や銅鏡などが出土されている。

ものづくりの街・東大阪市にあるハタメタルワークスは、そんな銅に特化した加工会社だ。

銅には熱伝導のよさや抗菌性など、いくつも優れた特性がある。電気を通しやすいのも、その特性の一つだ。同社には、そうした性質を生かした電気関連の加工の依頼が数多く寄せられているそうだ。

「主に産業用電池や電源装置、配電盤などに使う加工品を作っています。取引先は、300社くらいです。いまはあらゆるところで電気や電子関連機器が使われているので、業種はさまざまです」

そう言うのは、3代目の畑敬三さんだ。銅加工に特化する決断をした立役者である。

創業は1935(昭和10)年。祖父が金属加工品を扱う小さな商社を始めた。戦後、2代目である父が金属加工を手掛け畑鉄工に改組した。

「3社ほどの会社と取引があったんですが、売り上げの大半はその中のY社からの仕事でした。いわば、一社依存の下請けでやってきたんです」

畑さんは大学を卒業すると繊維商社に就職した。家業を継ぐかどうかは決めかねていた、と話す。

「微妙なところで、将来は戻ってもいいかなくらいの気持ちではいたんです」

商社に勤めて7年目のことだった。父が病気になった。その頃、発注元のY社が大手企業に吸収合併されるかもしれないという話が出ていたという。

取材・文 鳥飼新市
撮影 編集部


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本記事は、月刊『理念と経営』2025年12月号「逆境!その時、経営者は…」から抜粋したものです。

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