『理念と経営』WEB記事

「新たな物語」が紡がれることこそ、大きな価値だ

岡崎製材株式会社 経営企画室室長 八田壮史 氏

“老舗材木屋の後継ぎ”として、入社以来「木の物語」を広く発信する方法を試行錯誤してきた八田壮史さん。同郷の石材店とのコラボ、そしてハリウッド映画とのコラボを経て、“共創が自社の世界を広げてくれる”と強調する。

全く異なる二つの素材が出会ったら?

愛知県岡崎市で100年以上の歴史を重ねてきた岡崎製材。その5代目後継ぎとなる八田壮史さんは、地域に根ざしながら、いま、「共創」という言葉を意識する次期経営者だ。

同社は2017(平成29)年、木材加工の際に出る切れ端を捨てずに雑貨や器へと再生する「HAZAI® project」を開始。テーマとして「木の復権」を掲げた。

「木目を見れば、その年の雨の量や浴びた光の多さまでわかります。数十年、数百年という時間を生きてきた木には、その一つひとつに物語が刻まれているんです」

木材を単なる資材ではなく、「物語」を宿した存在として見つめ直す――。そんな視点が、後に一つの共創の扉を開くことになるのである。

きっかけは地元のイベントだった。石材加工を手がける稲垣石材店の4代目である稲垣遼太さんと顔を合わせた八田さんは、互いに後継ぎであり、世代も近いことから意気投合した。稲垣石材店もまた、石材を加工する際に出る端材を、廃棄物とせず商品化する取り組みを続けていた。その活動は岡崎製材の「HAZAI® project」と響き合うものだった。

「石は高級感があるけれど重くて扱いにくい。木は温かみがあるけれど地味。そんなイメージを持つ人も多いと思います。そこで、私たちは互いの弱点を補い合い、“共に主役にならずに調和する”ことで、新しい価値を生み出そうとしたんです」

こうして誕生したのが、木と石を組み合わせた雑貨ブランド「Ki+Seki-木石-」である。ブランド名には「木」と「石」という素材を冠するとともに、「奇跡の出会い」という意味を込めた。コースターやトレー、アクセサリー置きなどの雑貨は消費者の目を引き、ECプラットホーム「Makuake」で展開したクラウドファンディングでは目標支援金額の7倍近くを達成。二人の挑戦は地域の枠を超えて広く注目を集めた。

失敗を恐れていては会社の成長も止まる

さらにこの実績が思いもよらぬ縁をつないだ。映画配給会社のユニバーサル社とMakuakeが連携するプロジェクトにおいて、「Ki+Seki-木石-」がハリウッド映画『ウィキッド ふたりの魔女』とのコラボレーションに抜擢されたのだ。……


『ウィキッド ふたりの魔女』のコラボ商品開発は、「Ki+Seki-木石-」の物語性に共感したMakuakeの担当者によるオファーで実現した

取材・文 稲泉 連
写真提供 岡崎製材株式会社


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本記事は、月刊『理念と経営』2025年12月号「特集」から抜粋したものです。

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