『理念と経営』WEB記事

“あなた”のために、 生の歌を届けにいきたい

歌手・一般社団法人gigi 発起人 一青窈 氏

歌手の一青窈さんは〝訪問ライブ〞を病院や養護施設で行う「gigiプロジェクト」という活動を率いている。歌手になったきっかけから続けてきた、一青さんの原点ともいえる活動について話を聞いた。

平和を願いながらも
声高に叫ばない理由

一青窈さんの代表作「ハナミズキ」は単なるラブソングではない。2001(平成13)年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件に突き動かされて書いた曲だということは、つとに知られている。

テレビが映し出す、ニューヨークのワールドトレードセンターのツインタワーに2機の旅客機が激突し、ビルが崩れる映像。それをボロボロ泣きながら見て、溢れるように出てくる言葉を書き留めた。それらの言葉を下敷きにしてできた歌だ。

「20分くらい、ひたすら世界の平和を願って書いたんです」

その歌が結婚式で歌われるようになって、一青さんは「あっ、恋愛の歌詞として受け止められているんだ」と気づいた、と話す。

この「ハナミズキ」に限らず、一青さんは自分が歌うモチベーションは「平和への願い」だという。だけど大上段に平和を叫ぶことはしない。

「恥ずかしいので……」

そう言って、言葉を継いだ。

「それがわかりやすいなら『LOVE&PEACE』と声高に言いますけど、基本は"あなた"にだけ届けばいい。膝を抱えているあなたに」

それが彼女の流儀なのだ。たとえ何万人という大きなコンサート会場でも、一人ひとりの心に届くように歌に思いを込める。

実際、彼女はデビュー前から一人の人に歌を届けるチャリティーライブを続けている。小学校から続けたバスケット部でのニックネームに由来する「gigiプロジェクト」だ。小児病棟や児童養護施設、病院などにいる人たちから要望を受けて出かけて行く、"訪問ライブ"である。

心が震える瞬間を
生の現場で分かち合う

高校時代、一青さんはこんな経験をした。

末期がんで闘病中の母が、ある日、友人に誘われてミュージカルを観に行った。帰ってきた母は、見違えるほど活力を取り戻していたという。

「音楽には、こんなにも人を元気にさせる力があるんだ、と驚きました。私も音楽で誰かに元気を送れるようになりたいと思ったんです」

取材・文 鳥飼新市
撮影 後藤さくら
Hair & Make 岩永あやか


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本記事は、月刊『理念と経営』2025年10月号「人とこの世界」から抜粋したものです。

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