『理念と経営』WEB記事

広告を“民主化”すれば、社会はもっと豊かになる

株式会社チアドライブ 代表取締役 保科昌孝 氏

一般車のリアウインドーを広告枠として活用できる「マイカー広告」のサービスを運営するチアドライブ。「シェアリングエコノミー」が社会に浸透する前の創業――地道に信頼を積み上げてきた保科社長は、事業にどんな願いを込めるのか。

年間7兆円の広告費がどこに流れているか?

車のリアウインドーに広告ステッカーを貼って走るだけで、月に数千円の報酬が得られる――。保科昌孝さんが代表を務める「CheerDrive」は、そんなシェアリングエコノミーによる広告の仕組みを提供するスタートアップ企業だ。個人の自家用車を広告媒体とし、広告費を生活者へ直接還元するこのサービスは、すでに登録者数が10万人を突破。東京や大阪、名古屋をはじめ、全国各地の都市部を中心に台数を増やしている。

「Cheerは“応援”の意味。企業の商品やサービスに共感した人が、自ら広告を担って走るという発想です」

保科さんが同社を起業したのは2020(令和2)年、広告代理店を経てドワンゴに入社し、「N高」の設立に携わった後の独立だった。

「マイカー広告」の仕組みは極めてシンプル。ドライバーはまず専用アプリに登録し、参加したい広告キャンペーンに応募。審査を通過すると、ドライバーの元に広告ステッカーが郵送される。それをリアウインドーに貼り、決められた期間を走行すれば報酬が支払われる。スマホアプリによる走行管理や、一度剥がしてしまうと同じように貼ることが難しいフィルムの採用など、技術面での工夫も企業からの信頼を得ているポイントだ。

興味深いのは、保科さんがこの「マイカー広告」というアイデアに次のようなテーマを込めていることだろう。

「日本の広告費は年間約7兆円。その多くがマスメディア、あるいはGoogleやMetaといった外資系のプラットホームに流れています。でも、広告というのは本来、人と人の信頼をつなぐものでもあるはず。だから、僕は広告をもっと“民主化”したかったんです」

広告の民主化―それは保科さんにとって、“誰もが発信者になれる時代”にふさわしい、生活者中心の新しい広告モデルをつくることを意味した。

「きっかけは、人気テレビ番組の『水曜どうでしょう』でした。……

取材・文 稲泉 連


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本記事は、月刊『理念と経営』2025年10月号「特集2」から抜粋したものです。

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