『理念と経営』WEB記事
特集2
2025年8月号
5年後、10年後にどんな会社でありたいか

株式会社スタプランニング 専務取締役 赤嶺サオリ 氏
かつては月100時間を超える残業が常態化し、年間10人以上が離職していたスタプランニング。今や社員が定着し、互いに夢を応援し合う持続可能な組織に生まれ変わった。変革の歩みを、赤嶺専務が語る。
働くのが楽しくて、残業ばかりだった
建物の設計、施工、デザインを手掛ける会社を夫と創業したのは、1996(平成8)年でした。当時は仕事の7割が商業店舗の設計デザインで、月に4店舗オープンしていた時期もあります。どうしても短い工期の仕事になるので、とにかく猛烈に仕事をしていました。
ただ、5年ほどして社員も増え、先輩経営者からアドバイスを受けたんですね。「こんな働き方では、長くは続けられない。まずは経営理念をしっかり定めて、5年後、10年後にどんな会社でありたいかを意識しなさい」と。それで経営理念を定め、短期間で無理に仕事をしないためにも、事業を安定させるためにも、工期の長い公共工事や大型物件を増やしていったんです。
その後も、繁忙期の受注は時期をずらす交渉をしたり、受注件数を減らしたりしていきました。社員の休みを考慮して無理なく仕事を入れるようにして、週休2日制も取り入れたのですが、それでもなかなか労働時間は減らず、生産性も上がらなかった。やっぱり、私たちの仕事は楽しい部分もあるんです。だから、ついつい長時間労働をしてしまう。
そこで2013(同25)年に荒療治に出ました。社長が全社員に渡していた会社の鍵を回収することにしたんです。18時には施錠し、朝も社長が来るまで会社には入れない。6カ月ほどで、残業は月平均4時間まで減りました。
結果、会社は一時的に赤字になり、離職者も出て、社員はかなり入れ替わりました。でも、当時のままでは会社は変われなかったし、業務改革もできなかったと思います。
再スタートを切るため、新たなお客様を地方自治体で探し、公共交通機関の仕事の獲得に向かうようになりました。当然、そうなれば自社の社員で対応できるようにならなければいけません。そこで、人材のスキルアップへの投資を行ったことで、建築領域で会社としての技術力を高めることにもつながりました。今では公共工事が約7割と、かつてとは比率が逆転しています。残業しがちな会社のカルチャーを変えて生産性を高め、さらに必要とされる技術も習得することができたんです。
社員の人生を丸ごと応援する
今は男女比がほぼ半々ですが、もともと女性が多い会社でした。……
取材・文 上阪 徹
本記事は、月刊『理念と経営』2025年8月号「特集2」から抜粋したものです。
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