『理念と経営』WEB記事

いざという時に、体が 勝手に動いてくれた

「自動車板金」職種  金メダル トヨタ自動車株式会社開発試作部 小石嵩陽さん

それは高校時代から夢見ていた大舞台だった。「自動車板金」職種で念願の金メダルを獲得した小石さんが「技能五輪」で得たものとは―。

「何があっても冷静沈着に」

昨年9月、フランスのリヨンで「第47回技能五輪国際大会」が開催された。2年に1度開催されるこの大会の「自動車板金」の職種で、見事金メダルを獲得したのがトヨタ自動車の小石嵩陽さん(22歳)だ。

中学を卒業しトヨタ工業学園に入学して以来、自動車板金の国際大会の舞台で優勝することを夢見てきた。6年間積み重ねてきた訓練が、今回の結果へとつながった。

戦いは、4日間16時間にわたるハードなもの。事故車を修復する想定で行われた競技は、歪んだフレームの測定や損傷を受けたフレームの交換・修復などの6種目。審査員が細かくチェックし採点する。

修理する車は、開催国の国産車であるプジョー。
「メーカーによって車の構造は全然違う上に、今大会から工具も開催国が準備することになったので使い勝手がわからない工具も多く、かなり苦労しました」と小石さん。

最大のライバルは中国だった。今大会、自動車板金以外の職種でも、全59種目中36種目で金メダルを獲得するなど、成長著しい。

そこにはいくつかの背景がある。一つは支援体制の違いだ。日本人選手の場合、基本的にその選手が所属する企業で訓練を行っている。一方、中国では一種の国策として国が支援の場を提供する。優秀な選手を全国から集めて訓練し、その中で勝ち残った選手が国際大会に出場するという仕組みなのだ。当然、訓練時間も、そこにかける資金も多い。日本も重点種目への支援増強を進めているが、厳しい状況にある。

また、競技内容についても、日本の場合は、国内で開催される「全国大会」と「国際大会」とでは競技内容が異なるのだが、中国は、2つの大会の競技内容には類似性があり、国際大会における優位性が増す。

「だからなお一層、中国に勝つんだとの強い思いで挑みました」
準備期間は約10カ月。

「全国大会と国際大会は競技種目がまったく違うので、まずは使ったことのない工具に慣れることと、自動車の構造を学ぶところから始めました。加えて、大会では、事前に聞いていた道具と異なるものが用意されていたり、開始時間が大幅に遅れたりすることもあるので、動揺しないようメンタル面の強化が重要です。何があっても冷静沈着に進められるよう、専門の先生に指導していただきました」

“鉄板と対話”するほど一心不乱に

迎えた本番。最終4日目の途中までは順調に進んだのだが、終了間際の40分前、ドアの歪み取りの段階で、思いもかけないトラブルに見舞われた。

取材・文 長野修
写真提供 トヨタ自動車株式会社


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本記事は、月刊『理念と経営』2025年7月号「技能五輪のメダリストたち」から抜粋したものです。

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