『理念と経営』WEB記事

中小企業とスタートアップが 共に未来をつくる

独立行政法人 中小企業基盤整備機構 創業・スタートアップ支援部長 石井芳明 氏

立ちはだかる社会課題を解決するために、スタートアップの活躍が見逃せなくなってきている。本企画では、経済産業省で長く創業支援に努め、自身も商家の出身だという石井芳明氏に、スタートアップの課題と未来について語ってもらった。

実は日本は起業しやすい国

――石井さんは長年、経産省でスタートアップの支援に携わってこられましたが、その取り組みの概要について教えてください。

石井 安倍政権の「三本の矢」を柱とする経済政策のうち、成長戦略の中のベンチャー支援の方針に沿ってさまざまな取り組みを続けてきました。例えば、新しいビジネスに挑戦している企業を評価し、世の中に広く知ってもらうための表彰制度である「日本ベンチャー大賞(現・日本スタートアップ大賞)」。また、政府として“推し”のスタートアップを選定し、そこに集中的に支援をする取り組み「J-Startup」。さらに、社会課題を解決するための技術開発の補助金制度である「SBIR(スモール・ビジネス・イノベーション・リサーチ)制度」などです。

――スタートアップの重要性をあらためて教えてください。

石井 今日本が目指している「新しい資本主義」は、経済の活力とともに社会課題を解決するのが目標です。社会課題は、これまでの既存のプレーヤーが解決できなかった課題ともいえますが、これを解決するためには、従来のやり方を変えることと、もう一つは、新しいプレーヤーが新しいことをやることが大事なのです。

――近年の欧米先進国の「起業率」はだいたい10%前後ですが、日本は4%から5%です。日本ではなぜスタートアップが少ないのでしょうか。

石井 確かに日本の起業率は低いのですが、起業したいと思った人が実際に起業する比率は20%弱で、欧米にも引けを取りません。つまり、「起業はしやすいけれども、起業しようと思う人が少ない」のです。無担保無保証で7200万円まで資金を貸してくれる日本政策金融公庫は、これまで何万件もの起業資金を提供しているし、今はクラウドファンディングで資金を集めることも可能なので、意欲さえあればハードルはそれほど高くないのです。しかし、起業自体が職業の選択肢として認識されていませんし、「親ブロック」や「配偶者ブロック」といわれるような周囲の反対も要因と考えられます。

――起業しようと思う人を増やすためには、何が大事ですか。

石井 サクセスストーリーを増やすことです。

取材・文 長野 修
撮影 編集部


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本記事は、月刊『理念と経営』2025年7月号「スタートアップ支援のプロに聞く」から抜粋したものです。

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