『理念と経営』WEB記事
特集
2025年6月号
「マッチョ」の力で 介護のイメージを変える

株式会社ビジョナリー 代表取締役社長 丹羽悠介 氏
介護の仕事ってそんなに不人気なわけじゃない―。この気づきを得た丹羽社長が、人手不足の解決に乗り出す。起死回生の一手と目を付けたのは、自身が通うジムで黙々と筋トレに励んでいた「マッチョ」たちだった。
「カッコいい仕事だと思ってもらえたら」
人材不足、採用難が常に囁かれる介護・福祉業界で、年間なんと1000を超える応募がやってくるという。経済ニュースやゴールデンタイムのバラエティー番組にも「マッチョ介護」として取り上げられ、いまや海外からも取材が来る。全国で障害者向け施設を中心に介護事業を手掛けるビジョナリーだ。
「若い人は介護の仕事を嫌だと思っているわけではない。ただただ知らないだけなんです」
こう語るのは、社長の丹羽悠介さん。だから、知ってもらうために何ができるかを考えた。それがフィットネス実業団を社内に作ることだった。
高校を卒業し美容師になった丹羽さんは、やがて経営者に憧れ、飲食業や営業代行で修業を始めるも詐欺に遭い、借金を作ってしまう。まさに人生のどん底にいたとき、介護事業所に勤めていた姉から頼みごとをされた。
「利用者さんの髪を切ってあげてくれないか、と。すると、とても喜んでもらえて。こんな自分に『ありがとう』を言ってくれる人がまだいるんだと知ることができたんです」
介護の仕事に興味があったわけではない。ところがやってみると、とてもいい仕事だと気づいた。
「大変だったのは、むしろ美容師や飲食店、営業代行の仕事でした。介護士は途中で眠ってしまうほど肉体的にキツくなったりしないし、罵倒されたりすることもない。ギスギスした競争世界でもなかった」
2008(平成20)年に3人で開業。訪問介護の事業からスタートさせたが、転機は16(同28)年。施設介護の事業を始めたことだ。
「これはいまもそうですが、施設の建物を建てたオーナーさんがおられ、僕たちが運営を担うことになったんです」
従業員は20人ほどになっていたが、とても人手が足りない。そこで若い人たちの就業意識を探った。生の声を聞いたのだ。
「わかったことは、実はやりたいことや働きたい会社が決まっている人は、ほとんどいなかったことです。
それよりも楽しく働ける、人間関係がいい職場がいい、と」
そこでSNSを使って楽しい会社をアピール。従業員が笑う職場写真をアップすると、フォロワーが一気に増え、1万を超えた。
取材・文 上阪 徹
写真提供 株式会社ビジョナリー
本記事は、月刊『理念と経営』2025年6月号「特集」から抜粋したものです。
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