『理念と経営』WEB記事

挑戦と失敗の先で 本当の自信は見つかる

株式会社植松電機 代表取締役 植松 努 氏

植松電機は本業のマグネット製品の開発の傍ら、自腹でのロケット開発を行うことで知られ、池井戸潤の小説『下町ロケット』のモデルにもなったとも言われる異色の町工場だ。社長の植松氏は幼い頃から紙飛行機が好きで、その気持ちを力に変えて憧れの宇宙事業への道を切り開いてきた。人の可能性が奪われない社会をつくるために、全国の企業や学校で講演活動を行う植松氏。これからの日本を背負う若手社員と、彼らを導く先輩社員にどんな言葉を伝えたいか、じっくりと話をうかがった。

若者たちは失敗を恐れすぎていないか

「最近の若い人たちはみな素直で真面目で優しいですね。ただ、自分はこれをやりたいという意志があまり感じられないのがちょっと心配です。それはたぶん、自分で考えて行動して失敗するのが怖いのでしょう。余計なことはせず言われたことだけやっていれば、大きな失敗をして傷つかずに済むと親や先生から教えられてきているので、それが常識として身に付いてしまっているのです。

僕の経験上、優秀な理系の学部出身者ほど、自分の専門分野以外のことをやるのを嫌がります。失敗するかもしれないから知らないことには手を出したくないのです。でも、彼らが学校で習ったのは、10年前に出版された教科書の知識。それでは10年前の人工衛星しか作れません。まだ誰もやっていないやり方を発見するのが宇宙開発だということが、どうもわかっていないようなのです」

――これは他の業界も同じだろう。なぜなら、仕事というのは、まだ世の中にない製品やサービスを生み出して社会の課題を解決することだからだ。そのためには、誰もやったことのないことにどんどんチャレンジしなければならないのである。

「みんな自分が赤ちゃんだった頃を想像してみてください。何度転んでも恥ずかしくなったり、才能がないからもうやめようと思ったりしなかったでしょ。だから、いまこうして自分の足で歩けるのです。仕事もそれと同じ。いまできることだけやって失敗しなくてよかったでは、自分自身も会社も1ミリも成長できないのです。

それに、上司や先輩に言われたことだけやっていればいいというのでは、パソコンと大差ありません。それで人より早く結果を出せたと胸を張ったところで、そんなのはせいぜい搭載しているCPUの性能が少しいいだけのことであって、入力する人がいなければただの箱じゃないですか。そういう人を仕事ができるとはいわないのです。加えて、命令に従うことが仕事だと思っていると、いつの間にか自分は何がやりたくてこの会社に入ったかわからなくなります。それは夢を描きそれを実現するという誰もが持っている可能性を、失ってしまうということでもあるのです」

取材・文山口雅之
写真提供 株式会社植松電機


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本記事は、月刊『理念と経営』2025年5月号「単発企画」から抜粋したものです。

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