『理念と経営』WEB記事

老舗が育つ、日本ならではの風土とは

静岡文化芸術大学 文化政策学部 教授 曽根秀一 氏

世界でも類を見ないほど長寿企業が多い日本――。長年にわたり国内外の多種多様な企業を訪問し、老舗の研究を推し進めてきた曽根教授に、その存続メカニズムを伺った。

なぜ、日本企業はこれほど長寿なのか?

――日本の「SHINISE(老舗)」がいま、海外の企業研究でも注目されているそうですね。

曽根 日本には100年以上続く企業が、数えられるものだけでも3万社以上は存在しています。企業の寿命が20~30年といわれるなか、なぜそれほど多くの老舗企業が存続してきたのか。その事実が驚きをもって受け止められているんです。

リーマン・ショックやITバブルの崩壊などを経験し、世界的に長寿企業の持つ強さが再評価されるようになった、とも言えるでしょう。そうした企業の経営戦略から持続可能な経営のヒントを見いだそう、という研究が増えているのです。

――曽根教授は海外の事例も多く研究されていますが、それらと比べたとき、日本の老舗企業にはどのような特徴がありますか。

曽根 地政学的な観点から言えば、日本は島国であるため、他国からの侵略や植民地支配を受けてこなかったことがまずは挙げられます。しかし、もちろんそれだけが理由ではありません。日本独自の社会文化や経営風土が、長寿企業を生んできたと考えられるからです。

大きな特徴の1つは、職人を大事にする文化です。日本では何代も続く仕事に誇りを持ち、技術を磨き続けることを尊ぶ価値観が根付いています。

そもそも欧米では、長く存続している企業でもオーナーが短期間で何度も替わっていることが多く、株主中心の経営になりやすい傾向があります。そのため企業自体には歴史があっても、創業の頃にはあった経営の哲学や理念が失われやすく、短期的な利益の追求に傾きがちだと言えそうです。

一方、日本の老舗企業は単に利益を追求するだけではなく、……

取材・文 稲泉 連


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本記事は、月刊『理念と経営』2025年5月号「特集」から抜粋したものです。

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