『理念と経営』WEB記事

拡声器の技術を生かして「3ケタの仕事」を開拓する

株式会社ノボル電機 代表取締役社長 猪奥元基 氏

ノボル電機(大阪府枚方市)は「拡声用音響装置」の製造一筋に歩んできたが、需要は衰退。起死回生でノスタルジックな音とデザインが魅力の「スマホ用無電源スピーカー」を仕掛けて話題を呼んだ。猪奥元基社長が挑んだ社内の意識改革に迫る。

拡声器一筋に80年! 保守・堅実の会社を継ぐ

ノボル電機は「拡声用音響装置」のメーカーだ。移動販売車や清掃車のオルゴール放送、防災無線や自治体の広報車で使われるラッパ型のスピーカーと音響システム、あるいはイベントや交通誘導で使われるメガホンなど、遠くまでクリアに音声を伝える機器を製造し、全国の通信機器メーカー、工事店、販売店など約3000社に販売している。

同業メーカーは国内に3社しかなく、ノボル電機はそのなかで最小規模。そのため「徹底的に差別化を図り、大手との競合を回避しています」と猪奥元基社長は言う。

たとえばメガホン。防水・防じん性能は業界最高レベル、かつ最軽量で耐衝撃性も備え、消防、警察、警備といったプロユースの需要に応えている。製品一つひとつに利用者のかゆいところに手が届くような配慮を行き届かせることで、創業来80年にわたって存続発展してきた。

創業は1945(昭和20)年。猪奥社長の祖父がラジオ修理のノボル電機製作所を立ち上げてまもなく船舶用の拡声器をつくるようになり、以降、拡声器製造一筋に歩んできた。

「30年前の注文書にある製品を注文されることもめずらしくなく、そのときは日付を上書きして再注文として扱います。そういう業界です」と猪奥社長。最古参の社員でも拡声器しかつくったことがなかったそうだ。

「拡声器をつくり続けることが会社のアイデンティティーでした。保守的で堅実。それがノボル電機らしさになっていました」

父が2代目として成長路線を固め、自身は3代目として2018(平成30)年に社長に就任した。ただ、猪奥社長は京都外国語大学に進み、卒業後は自衛隊に入隊していた。4人きょうだいの長男だが、経営者適性のある姉か弟が継ぐものと思っていたところ、2人とも「自分の道を進みたい」と言う。歳の離れた妹に託すわけにもいかず、「ならば自分が」と入社を決意したのだった。



社内にはさまざまな拡声器が並ぶ。車載用スピーカーから小型メガホンまで。ニッチな需要にも応えられるのは確かな技術を持つ職人たちあってこそ

取材・文 中山秀樹
写真提供 株式会社ノボル電機


この記事の続きを見たい方
バックナンバーはこちら

本記事は、月刊『理念と経営』2025年3月号「企業事例研究2」から抜粋したものです。

理念と経営にご興味がある方へ

SNSでシェアする

無料メールマガジン

メールアドレスを登録していただくと、
定期的にメルマガ『理念と経営News』を配信いたします。

お問い合わせ

購読に関するお問い合わせなど、
お気軽にご連絡ください。