『理念と経営』WEB記事

吃音が夢を妨げない 社会をつくる

「注文に時間がかかるカフェ」発起人 奥村安莉沙 氏

吃音の若者たちが笑顔で接客する「注文に時間がかかるカフェ」。
自身も吃音者で、普通とは何かを問い続けてきた奥村安莉沙さんが目指す未来とは。

なぜ私は普通に話せないのだろう?

「注文に時間がかかるカフェ」(以下、注カフェ)という一風変わったカフェ、いやムーブメントがある。

店のスタッフは4人。お客は1時間10人の予約制で、4回入れ替わる1日限定のカフェだ。飲み物は無料。スタッフはみんな吃音者である。だからどうしても接客に時間がかかる。注文を聞き、飲み物を運び終えると、スタッフたちはテーブルを回り、お客との会話をゆっくり楽しむ。

注カフェは、吃音者が話すことの楽しさを実感する一方で、お客は会話を通して吃音への理解を深めるためのカフェなのである。症状が異なるスタッフたちは、それぞれ「こうしてほしい」という希望をエプロンなどにつけている。

奥村安莉沙さんは、注カフェを立ち上げた言い出しっぺだ。32歳、彼女自身も吃音者である。

「小さい頃、スターバックス・コーヒーの店員さんに憧れたんですが、接客は無理だと思っていました。でも、まずやってみようと始めたんです」

最初は、年に1、2回くらい、家にお客を招くような感じでやろうと思っていた。それがマスコミで報道されると、全国から自分の街でもやりたいと要望がくるようになった。今は常に8、9カ所で注カフェの企画が動いているという。

奥村さんは、おしゃべりが大好きな女の子だった。家では誰も吃音にはふれなかった。そんな彼女が自分の吃音を初めて意識したのは、小学校2年生のときだ。

ある日、いつも遊んでいた仲のいい男の子が、突然「お母さんに安莉沙ちゃんと話すと話し方がうつるから遊んじゃいけないと言われた」と言ったのだった。

取材・文 鳥飼新市
撮影 後藤さくら


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本記事は、月刊『理念と経営』2025年3月号「人とこの世界」から抜粋したものです。

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