『理念と経営』WEB記事
特集2
2025年1月号
「ぽぽちゃん」生産終了で、“守る戦い”をやめた
ピープル株式会社 取締役兼代表執行役 桐渕真人 氏
創業以来最大の収益を得た年の異例の決断――陣頭指揮を執る桐渕氏に、真意を聞いた。
長年売れ続けていた「ぽぽちゃん」との別れ
2023(令和5)年9月、弊社の看板商品ともいえる抱き人形「たんぽぽのぽぽちゃん」の生産終了を発表しました。問屋へ挨拶しに行ったところ、まだ年間3億~4億円の売り上げがある商品の生産をやめるというのは玩具業界では前代未聞のことだったようで、とても驚かれました。
1996(平成8)年の発売以来、累計580万体を販売し、2023(同5)年当時も売れていたぽぽちゃんの生産終了は、ヤフーニュースにも取り上げられました。それから数日間、会社にたくさんの電話がかかってきました。ぽぽちゃんとの思い出や愛を語る方もいれば、「すごい決断をした」と肯定的に応援してくださる方も多かったですね。
私が社内にぽぽちゃんの生産終了を告げたとき、ほぼすべての社員が反対の声をあげましたが、予想もしなかった大きな反響によってポジティブな雰囲気に変わったことを覚えています。私が社員の反発を押し切って生産終了を決断したのは、ピープルの“強み”を取り戻すためでした。
強みを減退させていたロングセラー依存の罠
創業者の長男である私は、大学卒業後の2005(平成17)年に入社しました。以来、幼児用自転車などの企画開発を担当し、2019(令和元)年に代表取締役兼執行役に就きました。当時、社内は主力商品への依存によってじり貧状態に陥っていました。
弊社には、ぽぽちゃんのほかにも「いたずら1歳やりたい放題」「ピタゴラスR」といった大ヒット商品があります。どれも1980~90年代に誕生したロングセラーで、今も弊社の主力商品なのですが、競合が出てきてコモディティー化したこと、工場がある海外の物価が上昇し、原価率が高くなったことなどが理由で、収益力の低下が進んでいました。
そこで私は、……
2023年9月に生産終了した「たんぽぽのぽぽちゃん」。長い歴史のなかで、さまざまなバリエーションが生まれた
取材・文 川内イオ
撮影 編集部
本記事は、月刊『理念と経営』2025年1月号「特集2」から抜粋したものです。
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