『理念と経営』WEB記事
特集1
2024年 12月号
この事業は、 必ず社会のためになる
マッチングワールド株式会社 代表取締役 町田 博 氏
余剰在庫の流通事業で急成長を遂げるマッチングワールド株式会社を、かつて襲った「暗黒の10年」。資金繰りに苦しみ抜いたこの時期に、町田博社長のよりどころになった決意の背景を伺った。
「法的に破産してはいかがでしょうか」
マッチングワールドの社長である町田博さんは、同社を53歳のときに起業した。2001(平成13)年のことである。国内のゲームソフトやゲーム機、玩具やキャラクターグッズなどの余剰在庫を、独自に開発したプラットフォーム「M -マッチングシステム」によってマッチングさせる同社の事業は、創業から順調に売り上げを伸ばしてきた。
だが、およそ25年の歴史を振り返るとき、彼には「暗黒の10年」と呼ぶ苦しい時期があった。上場も視野に入れていた08(同20)年、リーマン・ショックをきっかけに金融機関からの貸し剥がしを受け、資金繰りが厳しくなったのである。
「売り上げが一時的に大きく落ち込み、社員の給料などの支払いを済ますと、銀行の預金残高が1000円台になってしまうような時期が続いたんです」
町田さんが今でも忘れられないのは、そのなかで金融機関の担当者から言われた言葉だ。それまで事業の将来性を評価して出資を約束してくれていた担当者は、町田さんに手のひらを返すようにこう告げたのである。
「法的に破産してはいかがでしょうか。そのほうがその後の処理も楽になりますから」
だが、町田さんは社会に溢れる余剰在庫を、必要な人に届けるという事業に大きな可能性を感じていた。
日本における余剰在庫は約22兆円という規模で、在庫を処分したい企業と仕入れたい企業をマッチングする仕組みは、これからの時代においてさらに必要になっていく―新しいビジネスモデルへのそんな確信があったからだ。
「絶対にあきらめない」
金融機関の支店室で事業からの撤退を勧められたとき、町田さんはそう心に決めたという。以後、事業の見直しを進め、利益率の低かった「家電事業」からの撤退を決断。社員の給与の20%の削減、より賃料の低い事務所への移転など、矢継ぎ早に改革を行っていった。
「あのころは日々、生きていくことが精一杯という感じでした。絶えず売り上げを確認し、社員に給料をしっかりと払い続ける。何があっても踏ん張ろうという思いでいましたね」
町田さんの語る「暗黒の10年」の意味だ。
「53歳での起業」という決断の背景
その10年間、30億円ほどの売り上げを維持し続けた後、同社の未来に光明が見えてきた。
取材・文 稲泉 連
撮影 編集部
本記事は、月刊『理念と経営』2024年 12月号「特集1」から抜粋したものです。
理念と経営にご興味がある方へ
無料メールマガジン
メールアドレスを登録していただくと、
定期的にメルマガ『理念と経営News』を配信いたします。