『理念と経営』WEB記事
単発企画
2024年 11月号
22歳のアルバイトスタッフが、後継者に選ばれた理由

株式会社スカイスクレイパー 代表取締役社長 諸沢莉乃 氏
2024年5月、「カレーハウスCoCo壱番屋」などのフランチャイズ運営を行う株式会社スカイスクレイパーの社長交代が話題となった。22歳の女性アルバイトスタッフが後継者になったからだ。大抜擢の舞台裏と若き新社長の素顔に迫る。
次期社長への打診に即「はい」と答えた
「前社長の西牧(大輔)から社長交代を打診された時は冗談かと思いました。でも、単純に面白いなとも思ったんです。気づいたら『はい』と返事をしていました」
そう明るく答えてくれたのがスカイスクレイパーの新社長に抜擢された諸沢莉乃さんだ。彼女は、年商約20億円、群馬県など1都8県で、「カレーハウスCoCo壱番屋(通称ココイチ)」25店舗と「ラーメン大戦争」2店舗を運営し、パート・アルバイト含む従業員400名以上を率いる企業のトップとなった。
高校生だった諸沢さんが、横浜市内のココイチで働き出したのは郵便受けに投函されていた「店舗スタッフ募集」のチラシがきっかけだ。
「テスト期間は休んでOK、友達と一緒に面接もOKなど、良い条件が並んでいたので、最寄り駅だし行ってみようか、という軽いノリでした。働き出すと先輩スタッフは気さくに話しかけてくれるし、接客の仕事も面白かった」
そして、そこでの先輩との出会いが、諸沢さんの人生を大きく変えていくことになる。
「初めて『こういう女性になりたい』という人が現れたんです。当時、その方は大学3年生で年齢はそれほど変わりません。常に笑顔で前向きで、絶対に後ろ向きの発言をしない。
人の悪口も言わない。私が学校で何かあるとすぐに異変に気づき、休憩室で話を聞いてくれたりもしました。いつもスタッフのことを気にかけて、周りを巻き込む力や人間力が素晴らしかった」
接客を極めることも人のためになる
ある時、その先輩が本部である株式会社壱番屋主催の「接客コンテスト」に出ることになり、諸沢さんも見に行った。そこで当時の西牧社長に「来年は諸沢さんだね」と声をかけられた。
「西牧は皆にそうやって声をかけていたんですけど、本気にしたのは私だけでした(笑)。それからコンテスト用の練習会を店の先輩たちが開いてくれたんです。どのように接客するかなどロールプレイングで何度も練習しました。ちょっと怒り気味のお客様への対応も練習しました。まるで部活のような、今となっては青春の思い出ですね」
そのかいあって翌年、16歳になった諸沢さんは「西関東部営業接客コンテスト」で最年少優勝を果たす。高校卒業後はココイチでのアルバイトを続けながらボランティア活動にも励んだ。
取材・文/篠原克周
撮影/伊藤千晴
本記事は、月刊『理念と経営』2024年 11月号「単発企画」から抜粋したものです。
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