『理念と経営』WEB記事
特集1
2024年 11月号
「会社に行くのが楽しい」 古参が変えた若手の意識

株式会社バスクリン マーケティング本部メディア企画室リーダー 小松歩氏(左)取締役 久保康一氏(右)
バスクリン社内は雰囲気が明るい。社員が立ち上げた「バスクリン銭湯部」の部活動によって、部署や世代を越えた交流が生まれたからだ。社員同士の関係が変われば、大きな相乗効果が生まれる。その部活動の魅力を聞いた。
自慢話ではなく苦労話を後輩に伝えよ
「バスクリン銭湯部があるから志望しました」
就職希望者の中にこんな声があると知って、小松さんは驚いた。同部の現部長である。発端は、1人の社員の提案だった。発売当初の昭和初期、「バスクリン」は多くの銭湯で購入・利用されていた。そんな関わりの深い銭湯が、どんどん廃業していく。
銭湯と日本独特の入浴文化、そして自社のルーツを継承していくために銭湯部をつくりたい。「面白いじゃないか。やってみよう」と後押ししたのが、総務部にいた久保さんだ。
発案者が「バスクリン銭湯部部長」となり、久保さんは「番頭」を名乗る。2015(平成27)年のことだった。
立派な役職がそろうものの、活動はいたってゆるゆるだ。
第1回の活動は、東京・品川区の銭湯へ発案者・小松さん・久保さんの3人で赴き、汗を流す。居酒屋に寄って、発足を祝う一杯を味わい、よもやま話に花を咲かせた。
その後、3~4カ月に1度、社内掲示板で参加者を募って、銭湯と食事を楽しむ。ただ、それだけだが、小松さんの心の内には大きな変化があった。
「会社に行くのが楽しくなってきたんです」
決してイヤイヤ出社していたわけではない。銭湯の湯船で、あまり話したこともなかったベテラン社員から、「昔の会社はね」などと聞いた。
製品開発や営業の苦労などなど、共感できる話題もあれば、ずっと伝えていきたいと思えるエピソードもある。なにより、経験を積み、誇りを抱く先輩たちと一緒に仕事をしている貴重さに、気づかされたのだった。
「翌日からは、交わすあいさつもなんだか深くなります。飲み会では私もいろいろしゃべりましたしね。お互いに話すことが増えるんです」
取材・文 米田真理子
写真提供 株式会社バスクリン
本記事は、月刊『理念と経営』2024年 11月号「特集1」から抜粋したものです。
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