『理念と経営』WEB記事
特集1
2024年 11月号
やるべきことを全部やり、チームで競争力を生む

株式会社テックビルケア 代表取締役社長 茶橋昭夫 氏
「日々立ち止まり、社員のためになることを自問自答している」と語るのはテックビルケアの茶橋社長だ。考え抜いた末にたどり着いたのは〝当たり前の徹底〞。一歩ずつ改善を重ねるうちに見えてきたチームの成長とは。
あいさつと3Sで思考と行動が変わった
「労働集約的な建物清掃から、付加価値の大きい建築防災設備保全へ―主力事業の転換が課題でした」
父が興したテックビルケアに入社した茶橋社長は、意気込んでいた。一方で、いきなり社内をかき回すようなことをしても、うまくいかないとわかっていた。「まずは自身が実績を重ねて、社員から、お客様から、信頼される存在にならなければ」と、始めたのがウェブマーケティングだ。新規顧客の開拓に注力し、元請け比率の拡大を目指す。2年も経つ頃には成果が上がってきた。
並行して考え続けたのは、「どうしたら会社が成長するか。利益を増大させられるか」である。会社が目指す姿を社員と共有し、共に歩んでいきたい。そのための経営理念や経営計画書はあったものの、浸透の仕組みに欠けていた。風通しも良いとは言えなかったようだ。というのも、現場作業に出るエンジニアと内勤社員が、オフィスで共にする時間は短い。どうしたらいいのか。経営書を読み、勉強会にも精力的に参加した。
「突きつめると、当たり前のことの徹底が大事だと気づきました」
そこで始めたのが、あいさつルールだ。社員は皆、朝の出社時と夕方の退勤時、「おはようございます!」「お疲れ様でした!」と、どのフロアの人にも聞こえるように声をかける。すると、雰囲気が変わってきた。社員同士の会話の壁がグンと下がる。社内の会話量が増えてくる。
自分のデスクが自分の城とばかりに、ファイルが乱雑に積み上がるオフィスの姿も変えたかった。
「オフィスは社員みんなのもの。みんなが気持ち良く過ごせる場所づくりを継続してこそ、お客様に満足いただけるサービスを提供できます」
そこで、「整理・整頓・清掃」の3S活動を取り入れた。コンサルタントを入れて、目的や意義を繰り返し訴えた。
「古株の社員を中心に、反発も強かった。ですが、多少強引にでも進めなければと考えていました」
個人専用のデスクは廃止して、フリーアドレスのデスク制へ。隣り合う人が、毎日変わるようにした。私物はボックス一つに収め、退社時にデスク上にあるのは電話だけ、と決めた。デジタル化を進めて、紙の書類削減にも努めた。機能していなかった清掃当番表の運用を見直し、茶橋社長は自らトイレ掃除を担った。全員参加で、座学や月に一度の点検・改善活動も続け、思考と行動を変えていった。当初の3年間は外部の力を借りたという。
「当たり前の行動になるまで続けていくため、試行錯誤を繰り返しました」
取材・文 米田真理子
写真提供 株式会社テックビルケア
本記事は、月刊『理念と経営』2024年 11月号「特集1」から抜粋したものです。
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