『理念と経営』WEB記事

5児の母、 空き家再生事業へ―― 「私がやらねば誰がやる」

株式会社ARCH 代表取締役社長 橋本千嘉子 氏

事業に乗り出したとき、橋本さんは家族から猛反対されたという。しかし、現状に無関心ではいられなかった。橋本さんが下関に投じた“一石”とは――。

何もない街は可能性の宝庫だった

橋本千嘉子さんが常務取締役を務める上原不動産は、山口県下関市にある従業員12名ほどの不動産会社だ。代表の長女である橋本さんには、今、故郷である下関市の市街地で挑戦していることがある。それが、街の空き家を再生して地域の活性化につなげる事業だ。

そのために彼女は空き家再生事業を行う「株式会社ARCH」を設立。商店街に見つけた3軒の古い物件や空きビルをリノベーションし、レンタルスペースやシェアオフィス、シェアキッチンとして活用している。

「私がARCHを設立したのは、地元の不動産業者としての経験を下関の活性化に役立てたいと思ったからでした」と、橋本さんは言う。

「中学2年生の息子に『下関って何もない』と言われたことがあります。確かにその通りでした。私が小中学生の頃に行っていたお店のほとんどが、今では空き店舗になっているからです」

この街で不動産業を続けてきた経験を、地域の活性化に役立てることはできないだろうか――。

そんな意識を持つようになった橋本さんは、「街づくり」という視点で街歩きをするセミナーや勉強会に参加。コミュニティーを街に創出することで、地域全体を活性化する手法を学んだ。

上原不動産では以前から、高齢者や障がい者、外国人やひとり親家庭などの居住支援を行ってきた。彼女自身も個人で所有する物件をリノベーションし、空室の多いアパートを満室にする物件の活用を積極的に行ってきた。

そうした専門知識も踏まえながら新しい視点で「街」を見つめてみると、空き家同然の古い建物が、「コミュニティーの創出」にとって価値のあるモノに生まれ変わるのではないか、そうすることで、エリアの価値も上げられるのではないか、と考え始めた。

取材・文 稲泉 連
写真提供 株式会社ARCH


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本記事は、月刊『理念と経営』2024年 9月号「特集1」から抜粋したものです。

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