『理念と経営』WEB記事

「承認」の力が生んだ挑戦の気風

清松総合鐵工株式会社 代表取締役社長 清松芳夫 氏

鉄骨の設計・加工などを手掛ける清松総合鐵工。「承認」を軸にした独創的な朝礼を導入して以降は企業文化が大きく変わり、3年で売り上げは2.3倍にまで成長した。
飛躍的な成長の背景には、何があったのか――。

「このままじゃまずい」現状を打破するには……

三井造船で働いていた清松芳夫社長が、両親が創業した倒産寸前の会社をあえて引き継いだのは、自らの手で会社をつぶすことが目的だった。

「僕は連帯保証人になっていて、会社が倒産すれば2億円もの借金を背負わなければなりませんでした。もしそうなれば僕は大好きな両親を生涯恨むでしょう。それが嫌だったので、自分の手でつぶせば恨まなくても済むと思い、入社したのです」

当時の社内は、我を通す職人気質の社員が多く、至るところでけんかが勃発。社長自身も、社員になめられないようにいつも眉間に皺を寄せ威圧するような日々。しかも営業と接待の毎日で社員の顔すらまともに知らない始末だった。

ところがある時、全ての業務を取り仕切っていた専務が退社し、社長自ら現場を指揮することになる。

「このままじゃまずい。そう思った僕は、唯一社員全員と顔を合わす朝礼を活用しようと思ったわけです」

では、どんな朝礼にすべきか――。数多くの著作物などに学び、朝礼のあるべき姿を模索していた時、頻繁に出くわしたのが「承認」という言葉だった。その意味するところを徹底的に考え試行錯誤しながら、「承認」というキーワードを軸に独自の朝礼を生み出した。そこには3つのユニークな柱がある。

1つ目が「ハイタッチ運動」。朝礼の開始前から社長が会場の入り口に笑顔で立ち、集まって来る社員をハイタッチで迎える。

「人間関係を作る時に必要なのはスキンシップ。そして一番ハードルの低いスキンシップがハイタッチだと思うのです」

2つ目が「ええじゃないか運動」。ミスを犯した時、隠さずにみんなの前で発表するのだ。それに対して全員で「ありがとう!」と応える。

「失敗を責める社風では、“失敗しないこと”が最優先となり、挑戦の気風が生まれません。また、個人の失敗を共有することで、全体の失敗のリスクを下げることもできます。だからこそ、『リスクを教えてくれてありがとう』と言うわけです」

3つ目が「イイネ! 運動」。これは、社員が他の社員のいい所を見つけて発表するのだ。その直後、みんなで「イイネ!」と親指を立てる。

「誰かを褒めるためには、その人のことを知らないと褒められないので、必然的にその人を知ろうとし、いい所を探します。すると当然、人間関係はよくなります」朝礼は、わずか5分前後で終わる。短いゆえに毎朝やっても社員の重荷にならないのだ。

こうした取り組みによって、社内にさまざまな変化が起きた。まずは…



「イイネ!」と親指を立ててお互いを肯定し、他の社員のいい所を見つけて発表する――同社の社風を築く朝礼の一幕だ

取材・文 長野修
写真提供 清松総合鐵工株式会社


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本記事は、月刊『理念と経営』2024年 8月号「特集2」から抜粋したものです。

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