『理念と経営』WEB記事
企業事例研究1
2024年 8月号
コロナさえ追い風に。 創業家としての覚悟

よーじやグループ 代表取締役 國枝 昂 氏
京都市中京区にあるよーじやグループの社長・國枝昂氏。若干35歳にしてその責任感は並大抵のものではない。隙のない論理とたしかな指導力で、衰退する企業を明日へと導く。
ブランド力に安住した危機感のない会社
手鏡に映る、はんなりとした京美人の顔。このパッケージを知らない人は少ないのではないか。
京土産の定番、よーじやの「あぶらとり紙」である。30年ほど前、あるテレビドラマのワンシーンに登場したことで、一大ブームになった。
あぶらとり紙を買うのを目的に京都にくる女性が押し寄せ、同社の現・祇園本店では連日、1日で1200万円も売ったという。以来、あぶらとり紙の人気はいまも衰えない。
———入社されたのは2019(令和元)年の8月ですね。お戻りになった理由は何だったのでしょう。
國枝 一番大きな理由は、会社の危機を認識したことです。よーじやでは部門ごとの懇親会をやっていたんですが、たまたま日程が合って、ある部門の懇親会に初めて顔を出したんです。その後、そこで知り合った社員たちから悩み相談を受けるようになって、会社の実情がわかってきたのです。
———どんな相談だったのですか?
國枝 何事もトップダウンで自分たちの意見も聞いてもらえず、仕事に満足できないし、やる気も起きないということでした。その頃から、金融機関とも接点を持つことがあって、会社の財政状態が思った以上に悪いこともわかりました。
———たしか会計監査法人にお勤めだったと聞いています。
國枝 一人っ子だったので、いずれは会社を継ぐとは思っていたんですが、50歳過ぎてからかなというくらいの気持ちでいたんです。でも、この状況では、そうも言っていられないと思いました。そんなときに父が病気で倒れたんです。
———それが直接的なきっかけに?
國枝 そうです。副社長として働き始めました。長く管理職が変わってなくて組織は風通しが悪く、硬直していましたし、トップダウンで従業員のモチベーションが極めて低いこともわかりました。
———そのトップというのは?
國枝 古くからの番頭さんたちです。財政面も思った以上に厳しく、いつ“お金がなくなりました”と倒産してもおかしくない。本当に「丼勘定」の会社だなと思いました。
———よーじやと言えば誰もが知っているブランドですし、危機的な状況だったなど想像できないですね。
国枝 私も、同じように思っていたんです。だけど、現実は厳しいものでした。あぶらとり紙の売り上げも減ってきているのに、誰も危機感を持っていない。「よーじや」というブランドに安住している感じでした。
———なるほど……。
國枝 不採算事業がいくつも放置されたままでしたし、コストを見直すこともしない。なんとか立て直しをしようと、二つの軸を決めました。一つは「財政状態の健全化」です。そして、もう一つが「従業員の労働満足度の高い会社にする」ことです。
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取材・文 中之町 新
撮影 丸川 博司
本記事は、月刊『理念と経営』2024年 8月号「企業事例研究1」から抜粋したものです。
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