『理念と経営』WEB記事
特集1
2024年 7月号
居場所があること これが社員定着の秘訣

株式会社モチベーションジャパン 代表取締役社長 松岡保昌 氏
長く働いてほしい、意欲的に仕事に取り組んでほしい。経営者なら誰もが社員に望むことだ。社員のモチベーションを保つにはどうすればいいのか。心の動きを重視し、心理面からマネジメントにアプローチするプロフェッショナル・松岡氏にその留意点を聞く。
やる気を上げるよりも下げる要因を排除
企業の生産性を高めるための重要な要素として社員のモチベーションがあります。多くの企業は、それを高めるためにさまざまな取り組みを実施するわけですが、そこには重要な視点が抜け落ちています。それは、「モチベーションを下げる要因」を排除するということです。「上げる」よりも「下げる」要因を排除するほうが先なのです。モチベーションを上げるために各種イベントを実施しても、日常のモチベーションが低いとそれらがうまく機能しないのです。
モチベーションを下げる要因を「上司」と「企業風土」の側面から少し見ていきます。
まず「上司」。挙げればきりがないのですが、例えば、話を最後まで聞かずに結論を出す上司。部下の存在を大事にしていないことが部下に伝わりやる気を削ぎます。
他にも、コントロールできる部分を与えない上司。つまり、事細かに指示してその通りにやることを求める上司。人間は自分で創意工夫してこそ、成長もするし楽しいわけで、上司から言われるままにロボットのように仕事をしていてもモチベーションは上がりません。
言うことに一貫性のない上司もいます。タイプは3通りあって、1つ目は、あまり深く考えずにその場の思いつきで言うタイプ。2つ目は、中間管理職が上からの指示を自分なりに解釈せずにそのまま伝えるタイプ。3つ目は、説明が不十分なタイプ。朝に発した指示が変わったとしても、きちんと説明すれば理解を得られるにもかかわらず、説明を省くために一貫性がないように受け止められてしまいます。
こうしたモチベーションを下げるさまざまな上司の言動を集約して概念化すると、「その人をきちんと個として認めていない」ということになります。後ほど触れますが、人は誰でも承認欲求というものを持っています。その人が何を考え何をしようとしているのか、きちんと向き合って理解しようという姿勢がない限り、部下のモチベーションは上がりません。
居場所がないと人は定着しない
次に「企業風土」についてです。これも挙げればきりがありませんが、それらをまとめて一言で概念化すると「自分の居場所がない会社」です。
例えば、上司の顔色ばかりうかがってピリピリした雰囲気の会社。そんな職場からは創造的な仕事は生まれません。
物事を決められない会社も発展しません。失敗したときに責任をとらされるのが怖くて、いつも合議という名のもとに決めようとします。
1人で仕事を抱えすぎている職場もよくありません。周りの社員がそのことの妥当性について理解していればよいのですが、そうでない場合は社内が分断されているケースが多いです。そこからは一緒に何かを作ろうという雰囲気は生まれません。
経営理念が形骸化している企業も発展しません。形骸化しているということは、管理職を含め社員がその理念に対して当事者意識をなくした状態です。
その会社が成長できるかどうかを見極める1つのポイントは、幹部が経営理念を自分の言葉で言えるかどうかという点です。
取材・文 長野 修
写真提供 株式会社モチベーションジャパン
本記事は、月刊『理念と経営』2024年 7月号「特集1」から抜粋したものです。
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