『理念と経営』WEB記事
企業事例研究1
2024年 7月号
スーパーを超えた「活気が集まる場所」
クックマート株式会社 代表取締役社長 白井健太郎 氏
業界に地域最後発で参戦したクックマート(愛知県豊橋市)。「一言で言えない話が好き」と哲学的な一面を見せる白井社長が考えるローカルビジネスの在り方。
クックマートの創業は1995(平成7)年。愛知県東部から静岡県西部の地域で、高い売り上げを誇るローカル食品スーパーである。
大学卒業後、東京で広告やクリエーティブの仕事をしていた2代目の白井さんが戻ってきたのは、2010(同22)年、30歳のときだ。「これまでの自分の経験やノウハウをローカルなスーパーに持ち込んだら、何か新しい価値が生まれるんじゃないかと思ったんです」と、話す。
その思い通り、入社時8店舗だった同社は、現在12店舗。売り上げも倍以上になった。
――入社して食品スーパーはある種の「魔境」だと感じた、と言われています。
白井 合理性だけではいけない世界だと思いました。扱っている商品の半分以上が魚や肉といった“ナマモノ”だし、働いている人たちもローカル性が強い。地域によって食べ物の好みが違うんです。こんな狭いエリアでも、刺身といえば東三河はマグロで、浜松はカツオ。味噌であれば東三河は赤味噌で、浜松は合わせ味噌です。
――面白いですね。
白井 しかも、店には肉の得意な人、果物に強い人など、いろいろな分野のプロがいる。
――著書には「肉仙人」や「フルーツ王子」と書かれていました。
白井 ええ。「クックマートのさかなクン」「接客の神」とかですね。私の目には食品スーパーはこうした「名手」たちがいる、ユニークな世界、「魔境」に見えたんです。
――それは、逆に魅力的ですね。
白井 そうなんです。素人の目で見ても独自性のあるスーパーで、小さな割には一店舗あたりの売り上げが大きい。ある意味で野武士軍団的な強さがありました。その半面、ムラがあって店ごとにやっていることが違い過ぎていたりする“粗さ”があったんです。「魔境」的な部分を活かしながら、組織としての強さを整えていくのが自分のやるべきことかな、と思いました。
――まず、理念やコンセプトづくりから始められたそうですね。
白井 もともとあるものに言葉を与えたという感じです。クックマートはいい店なんですが、その自己認識が弱い。そこを客観的に観察して言葉にしていったんです。面白いのは、言葉にすることでクックマートのよさがさらに強まったことです。
――理念は、「楽しむ、楽しませる!」です。
白井 実は創業時に父がつくった理念があったんです。いいことを言っているんだけど長いし、クックマートの面白さを表現できていなくて、もったいないと思いました。
当時、クックマートは店の名前で、会社名は「デライト」でした。DELIGHT。楽しむ、喜ぶという意味の英語です。ひょっとしたら父はこの社名のような店にしたかったんじゃないか。そう思って、父に聞きに行きました。すると「そうだ」と言うんです。
――そこで理念が決まった?
白井 はい。直訳ではなく、もっとパンチが効いたクックマートらしさを表せる言葉にしたいと思っていたら、夏の家族バーベキュー会で実行委員たちが「今日は『楽しむ、楽しませる!』で行くぞ」と円陣を組んで叫んでいたんです。“これだ!”、と。
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本記事は、月刊『理念と経営』2024年 7月号「企業事例研究1」から抜粋したものです。
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