『理念と経営』WEB記事

好機を逃さない行動力と 臨機応変の対応力こそ

株式会社東光舎 代表取締役 井上研司 氏

東光舎が手がける理美容ハサミ「JOEWELL(ジョーウェル)」は、1970年代に海外販売をスタートし、いまやその輸出先は50カ国以上にのぼる。国境を越え、多くのプロユーザーから愛される世界ブランドの地位をいかにして築いたのか。

父から受け継ぐ「進取の気性」

― 貴社が製造・販売する「JOEWELL」の理美容ハサミは、海外でも多くのプロに愛用されています。グローバルブランドになった経緯を教えてください。

井上 国内の理美容業界では戦前から、当社製「ニハトリ印」のハサミが高い評価をいただいていましたが、商品の海外輸出を本格的に手がけるようになったのは、70年代になってからです。きっかけはイギリスのヘア・アーティストであるヴィダル・サスーン氏が始めた、セットして髪を整える必要のない革命的なジオメトリックカット。2代目社長の父・井上弘がいち早く、この手法に適した丈夫で小回りの利くハサミを開発したところ、たちまち評判になりました。さらに、ロンドンの美容専門学校に留学する日本の若者がみな、このハサミを持参するようになったため、その使いやすさが現地でも話題となり、海外からも注文がくるようになったのです。

―最初から海外市場を意識していたわけではなかったのですね。

井上 はい。父も、最初のころは海外から注文が届いても英文が読めないし、貿易のノウハウもないので、ずいぶん苦労したとよく話していました。それでも海外での人気をビジネス拡大のチャンスととらえ、新たにJOEWELLというブランドを立ち上げると、78年にはアメリカ・ロサンゼルスに支社を開設。その翌年にはヨーロッパ全体をカバーするため、ロンドンの商社と代理店契約を結びます。それ以降も見本市や展示会に出展してピーアールを重ねながら、オセアニアやアジア各国にも代理店を増やしていったのです。

―海外進出は順調でしたか。

井上 ハサミづくりの重要な工程はほとんどが職人による手作業です。父も本来は職人なのですが、輸出業務が忙しくなると現場をみる時間が削られます。そのせいで肝心のハサミの品質が一時期不安定になるというようなことはあったようですがその都度対応し、海外売上の比率は年々高まっていきました。

取材・文 山口雅之
写真提供 株式会社東光舎


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本記事は、月刊『理念と経営』2024年 6月号「特集2」から抜粋したものです。

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