『理念と経営』WEB記事

中小企業こそ「広報」に力を入れよ!――「ekky」に学ぶ

サンコー株式会社 執行役員広報部部長 家電製品アドバイザー 﨏(えき)晋介 氏

首にかけるクーラー「ネッククーラー」、弁当箱のままお米が炊ける「超高速弁当箱炊飯器」など“面白家電”でヒットを飛ばす家電メーカー「サンコー」。会社の知名度を大いに高めたのが、同社の広報部部長、﨏晋介さんだ。オレンジ色のシャツに蝶ネクタイ、ぶかぶかのオーバーオールで自身をキャラクター化して広報活動を続ける﨏さんに「伝える」ために大切な広報の心得を聞いた。

広報は予算がなくても工夫すれば効果あり!

「うちは予算がないから『広報』の業務なんてできないよ」―ー。そんなふうに思っている中小企業の経営者は意外と多いかもしれません。いえいえ、少し待ってください。もしかして「広報」と「広告」を混同していませんか? まず、広報と広告は別物ということを念頭に置いていただきたいです。

「広告」は広告代理店と打ち合わせして、予算をつぎ込みメディア(テレビや雑誌、インターネット)で宣伝を行うもの。一方「広報」はメディアに対して自社のプレスリリースを発信し、メディアの担当者の目に留まるようにして、テレビや雑誌、インターネットなどで紹介(掲載・放映)してもらう取り組みです。

そして広報と広告には他にも大きな違いがあります。それは費用がかかるか、かからないか、という点。広告と違い、広報活動には「予算がない」という心配は無用です。中小企業は広報を軽く見る傾向があり、広報担当者すらいない企業もありますが、広報に力を入れて売り上げが一気に伸びた例があることを、ぜひ知っていただきたいんです。

弊社もそのうちの一社。サンコー株式会社は、パソコン周辺機器の会社です。僕が営業スタッフとして入社した2015(平成27)年の売り上げは9億円、前々年は7億か8億円くらい。社員数は20名ほどでした。当時、新規事業として家電を扱うようになり、少しずつ自社製品を開発するようになっていました。

さっそく僕も営業として取引先に家電を提案しましたが、耳を傾けてもらえません。まずは、そこをなんとかする必要がありました。前職(海外化粧品会社)では営業と広報の仕事もしていて、カタログ通販やテレビショッピングを担当していました。テレビに出演する機会もあり、そこで広報の大切さを実感していたため、社長に「プレスリリースを書いてもいいか」と直談判したところ、やりたいことをやらせてくれました。

入社3年目の17(同29)年には広報部を設立し、広報業務をはじめました。広報部といっても一人だけ。プレスリリースを作り、テレビ番組の制作会社に送りました。広告はお金がかかるけど、広報ならリリースを作って制作会社に提案すればお金をかけずにPRができると踏んだのです。学生時代にテレビ局でバイトしたり、前職の仕事でもテレビで取り上げられた経験があったりしたので、僕はテレビの制作現場の構造を理解していました。

テレビの世界に縁遠いとテレビ局へのアプローチは、敷居が高いと感じるかもしれません。でも番組の多くはテレビ局が作っているのではなく、制作会社が作っているんです。会社の規模を見ると、少なければ5人ほどでやっている制作会社もあります。そう考えると少し気楽になりませんか? 制作会社も普段からネットニュースを見たり、雑誌、新聞を見ながらネタを探したりしていますから、情報提供はありがたいのです。

メディアで印象に残るコツを押さえる

狙い通り制作担当者の目に留まり、広報部を立ち上げてすぐに、番組に呼ばれるようになりました。露出が増えていくにつれ、自ら「ekky」と名乗ることでキャラクター性を押し出しました。﨏という苗字は珍しいし、読みづらいですから。極めつけは18(同30)年に出演した「タモリ倶楽部」。そこで衣装を一新。最初はワイシャツにエプロンでしたが、タモリさんの横でしゃべるならインパクトのある“キャラ付け”をしたほうがいいと考え、オレンジ色のシャツを着用(その後蝶ネクタイも着用)。出演後の反響は絶大で、問い合わせが殺到し、売り上げもアップしました。

21(令和3)年には「がっちりマンデー!」に出演。ディレクターからのアドバイスもあり、企業の特色を広報に活かすにはどうすればいいのかを考えました。当社の商品は「楽しい、面白い」が売りです。ユーモアたっぷりに紹介したほうが視聴者も食いついてくれるはず。ニコっと笑い、顔の横で「e」の字を指で表現するエッキーポーズを加え、衣装もオーバーオールに変更。面白キャラをパワーアップさせました。ポーズを決めると視聴者の目に留まるので、効果もテキメンでした。

取材・文 篠原克周
写真提供 サンコー株式会社


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本記事は、月刊『理念と経営』2024年 6月号「単発企画」から抜粋したものです。

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