『理念と経営』WEB記事

第4創業で産地と食卓をつなぐ

石井食品株式会社 代表取締役社長執行役員 石井智康 氏

日本の農業の担い手不足が懸念される今、石井食品(千葉県船橋市)の石井智康社長は、「食品メーカーには農と食卓をどうつなげていくかが問われている」と語る。その真意とは。

無添加調理※という“茨の道”を選んだ父

(※石井食品の製造工程では食品添加物を使用していない)

発売から50年、「イシイのおべんとクンミートボール」で知られる石井食品の企業スローガンは「イシイの本気は、裏に出る。」である。

裏とは、商品パッケージの裏、つまり成分表示のことだ。

たとえば「京都舞コーンスープ」。成分表示は「とうもろこし(京都府産、遺伝子組換えでない)、食塩」だけで、食品添加物は一切使用されていない。食品添加物を使わず“おいしい”商品をつくる。それが「イシイの本気」なのである。

――長くITエンジニアとして働かれていたそうですね。

石井 はい。家業を継ぐ気はなくて、ITコンサルティング会社のエンジニアとして働き、独立しました。周りから「どうせ会社を継ぐんだろう」と言われると、絶対に継ぎたくないと……。あまのじゃくといえば、あまのじゃくですね。

――食に関心を持たれたのは、奥様の病気がきっかけだと伺っています。

石井 それも大きな要因でした。それ以前から、私自身、ロボットやAIなどと関わっていくなかで、ITとリアルを融合させていくことが今後求められてくるだろうなと思っていたんです。たまたま田植えを手伝う機会があって、農業や食の分野でその可能性を探ろうとし始めていたときに、妻の病気がわかりました。自分の大事な人が病気を抱えて、食べるものに気をつけようとしたときに、スーパーなどで買える物の選択肢がすごく狭いことに気づいたんです。

――確かに無添加食品や無農薬野菜を探すのは難しいです。

石井 これは一つの社会課題じゃないかと、ビジネス的なニーズもあるとも思いました。

――足元を見たら、そこに無添加調理を実践している会社がある、と?

石井 そうです。父が長く無添加調理にこだわる商品づくりをしていることは、経緯も含めてリアルタイムで知っていました。創業者の祖父は頑固でストイックな開発者でした。父は、どちらかというと思想家です。経済合理性よりも社会にそれが必要かどうかを考える。父は食品製造の在り方が食品添加物ありきになっていること自体に疑問を持ったようです。

――いつ頃からですか?

石井 1990年代後半です。それ以来、食品添加物を使わずおいしい商品をつくりたいと努力をしていました。それは非常に大変な道のりだったと思います。当社の主力商品のミートボールなどはマイナーチェンジからメジャーアップデートまで複数回行なっております。本当にめちゃくちゃおいしくなってますよ。


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取材・文 中之町 新
写真提供 石井食品株式会社


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本記事は、月刊『理念と経営』2024年 6月号「企業事例研究1」から抜粋したものです。

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