『理念と経営』WEB記事

進捗に応じた「報連相」が生産性を高める秘訣に

ローム株式会社 元常務取締役 山葉隆久 氏

与えられた仕事を自分なりに考え完成度の高いものに仕上げる―。その心意気はもちろん大事だ。しかし全体像も理解せず無手勝流で仕事を進めれば、ズレが生じる可能性は高い。「質問するのは新入社員の特権だ」くらいの意気込みで、ためらわず上司・先輩に教わることが成長の近道になる。

すべてのビジネスパーソンにとって、「どんな会社でも通用するスキル」とは、どのように身に付けていくものなのか。そのために必要な働く上での姿勢を考えておくことは、新社会人にとっても大切なことだろう。

『誰とでもどこでも働ける最強の仕事術』の著者で、ロームなどの半導体企業で取締役も務めた山葉隆久さんは言う。

「『与えられた仕事を単なるタスクではなく、自分事として捉えて動く』という姿勢。それが組織で働く社会人としての『ベース』を作り上げていくのだと思います」

上司・先輩の真似で構わないから「まずやってみる」

新人の頃はまだ、用意される仕事の納期も厳しいものではないはずだ。例えば、そのなかで上司から「3日後」と言われた納期の仕事を、「1日半」にできる方法がないかを考えてみる。あるいは、依頼された資料の完成度を、自分なりに少しでも高いものにしようとしてみる。また、仕事に取り組む前に悩むのではなく、「まずはやってみる」という癖をつけていくこともその一つだ。山葉さんは仕事に向き合うそうした積み重ねが、結果的に「生産性の高いスキル」となっていくと話す。

「自分で考えることのできる社員は強い。しかし、配属された当初は職場の全体像もわかりませんし、自分が何を目指せばいいのかが曖昧なことが多いでしょう。そこで最初に意識すべきなのは、『職場の見えるところで感動する』という視点だと思います。具体的には、上司や先輩の仕事の進め方を見て『すごいな』と思ったら、そう思うだけではなく彼らのやり方を積極的に真似て取り入れていきましょう」

このときポイントとなるのは、上司や先輩に「聞くこと」をためらわないことだ、と山葉さんは続ける。

「どんなに忙しそうにしていても、新人からの質問を嫌がる先輩や上司は少ないものです。例えば、大学や高校といった学生生活で、後輩からアドバイスを求められても悪い気はしなかったはず。それと同じで、入社1年目の自分には『何でも質問をする権利がある』くらいに思っている人が、結果的に仕事のスキルをいち早く身に付けていく。

一方、会社側も新入社員が気軽に仕事について質問できる雰囲気を、常日頃から作っておきたいものです」

ただ、ここで注意しなければならないのは、漠然と質問を投げかけることや悩みごとを聞くことが「聞く力」ではないことだ。

「大事なのは『悩む』と『考える』の違いを意識する姿勢です。どんなに的が外れていたとしても、質問をする際は一つの仮説を立てる。『自分はこんなふうに考えてみたのですが、どのように考えたらいいですか』という聞き方をするのが基本だと覚えておきましょう」

取材・文 稲泉 連


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本記事は、月刊『理念と経営』2024年 4月号「特集2」から抜粋したものです。

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