『理念と経営』WEB記事

「伝え方」を変えれば、確実に会社が変わる!

株式会社グローコム代表取締役社長 エグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション戦略研究家 岡本純子 氏

個々人のスタンスと多様性が大切にされる令和の時代。昭和型のコミュニケーションが通用しなくなった昨今、部下とのコミュニケーションに苦労している経営者も少なくない。コミュニケーションやスピーチのスペシャリストである岡本純子さんは、コミュニケーションは「技術」で、いつからでも、誰でも取得できると語る。

自己流コミュニケーションは、もう限界です

中小企業の経営者やマネジャークラスの中には、部下とのコミュニケーションに悩みを抱えている人も多いだろう。近年ではコンプライアンス重視の時代の流れもあり、それこそ「昭和」の時代のように叱ったり、飲み会の席で仕事について語ったりするやり方は成り立たなくなった。そんななか、部下とのコミュニケーションを深めようにも、「自己流」での手法に限界を感じている人も少なくないのではないだろうか。

「叱りたくても我慢する。褒めようとしても、どう褒めたらいいかがわからない。昔ながらのスタイルを変えることができず、身動きが取れなくなっている人にまず意識してもらいたいことがあります。それは、コミュニケーションが『科学』であるということです」

そう語るのは、エグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション戦略研究家として「世界最高の話し方の学校」を主宰し、これまでに1000人を超える経営者に「話し方」「伝え方」を教えてきた岡本純子さんだ。

新聞記者を経てアメリカでメディア研究を行い、企業経営者向けのプレゼンコーチングなどに携わってきた岡本さんは、ニューヨークの街角にはコミュニケーションを学ぶための様々なスクールやワークショップが「コンビニのようにあった」と話す。

“コミュ力”は技術として習得するもの

欧米では幼い頃からディスカッションやプレゼンテーションを学校で教わるが、経営者や昇進を控えたビジネスパーソンもまた、そうした場所で自身の「コミュニケーションスキル」を日々磨き続けている―。
つまり、部下や同僚に物事を伝える力が、「技術として習得するもの」とされているわけだ。

「ところが、日本では“コミュ力”は生まれつきの才能と捉えられがち。多くの日本人の経営者は誰に教わるでもなく、自己流で社員とのコミュニケーションを行っています。それでは免許を持たずに路上で車を運転しているようなものでしょう」

と岡本さんは指摘する。

「本来、どのような伝え方をすれば人が動くかということには、心理学などで明らかにされてきたエビデンスがあり、方程式があります。例えば、アイコンタクトをどうするか、プレゼン時の手の置き方、話している時のジェスチャーの仕方や目線の動き……。それぞれに『正解』がちゃんとあるわけです。よって、それらはしっかりと系統立てて学びさえすれば、誰もが身につけられるものなんですね」

では、その「スキル」とは具体的にどのようなものなのだろうか。ここでは岡本さんの著書『世界最高の伝え方』に即しながら、「伝え方」に的を絞ってみていきたい。

「伝え方」の肝は「言い換え」です

岡本さんが特に重要なスキルとして挙げるのが、「7つの言い換え」を身につけることだ。

その「言い換え」は次のように「SPECIAL」と覚えることができる。

「S」:Small/Specific=抽象的な言葉を使わず、なるべく小さく、具体的に物事を伝える。
「P」:Proposal=一方的な「命令」ではなく、相手が動きやすい「提案」を行うコミュニケーションを心掛ける。
「E」:Elect=過去の行動を叱るのではなく、未来への行動変容を促す言葉を投げかける。
「C」:Cause=「なぜなら」と理由をもって相手の行動を導く。
「I」: I =主語を「You」から「I 」に変え、相手を責めずに自分の気持ちを伝える。
「A」:Affirm=ネガティブな言い方をせず、肯定的で行動につながる言葉を使う。
「L」:Like=相手を敵視するのではなく、支援者や仲間のように振舞って信頼を得る。

例えば、なかなか朝起きない子どもに「早く起きなさい」と頭ごなしに言うのではなく、「8時までにパンケーキできるよ」と言えば相手の反発を招かずに、行動を促すことができる。物事を細かく具体的に伝えること。Small/Specificの基本だ。

あるいは「P」=Proposalの場合は次のようなケース。職場で仕事が遅い社員がいたとする。そのとき「遅い!」と叱りつけるのではなく、「締め切りを守るためにはどうすればいいかな?」と相手に問いかける。

「『しっかりしろ』『何やっているんだ』と上から抑えつけるように言っても、相手には何のイメージも浮かばず、言葉が行動に結びつきません。だから、『早く宿題をしなさい』ではなく、宿題をいつまでにやらないといけないのかを聞いた上で、『一緒にやろう』と問いかけてみる。『なんでお前はそんなにダメなんだ』と非難するのではなく、『私』を主語にして『こうしてくれたら嬉しい』と気持ちを伝える。また、『私はこう思うけれど、あなたはどう思う?』と相手に答えを見つけさせることも一つの方法です。コミュニケーションを細かく、具体的に行うことが大切なんですね」

取材・文/稲泉連
写真提供/株式会社グローコム


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本記事は、月刊『理念と経営』2024年 2月号「単発企画」から抜粋したものです。

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