『理念と経営』WEB記事

冷凍ラーメンの自販機が掘り当てた意外なニーズ

株式会社丸山製麺 取締役 丸山晃司 氏

コロナ禍で売上高が8割減――。倒産の危機が迫る中、老舗製麺店の3代目の丸山晃司さんが開始したのが、冷凍自動販売機によるラーメン販売サービスだ。今や全国200カ所以上に広がり、会社は過去最高の売り上げを更新している。

「新規事業の成功は打率1割だと思っています。たくさんの事業を次々に展開していった中で、出会った事業でした」

丸山さんがIT企業のサイバーエージェントグループを経て、祖父の立ち上げた丸山製麺に入社したのは5年前、30歳のとき。当初から継ぐと決めていたというが、危機感はあった。

「事業そのものは祖父がつくってから、まったく変わっていませんでした。就職したIT企業で事業の栄枯盛衰を見てきたので、この先がずっと同じとはとても思えませんでした」

そこにやってきたのが、コロナ禍だった。外食産業への自社製造麺の卸事業は、街から人が消える中、まさに直撃を受けた。

「これで外食の形は確実に変わると思いました。ただ、前職で大きく成長する事業を見ていましたから、日本の市場にもまだまだチャンスはあると思っていたんです」

さまざまに挑戦した取り組みの一つに、麺のネット通販があった。少しずつ伸びてはいったが、既存事業をカバーするまではいかない。模索を続ける中、ラーメン店とコラボしたオリジナル商品を作り、スープと麺をセットで販売すると、売り上げが急伸した。

「外食ができない状況の中、おいしいラーメンを食べたいというニーズがあったんです。ただ、ネックになったのが送料でした」

そんなとき、冷凍自販機というものがあることを知る。自動販売機で買ってもらうなら、送料はいらない。冷凍麺を作る技術は社内にもあった。新たな設備投資もいらなかった。24時間、無人で販売できるユニークな冷凍ラーメン自動販売機という事業がこうして生まれた。

試行錯誤して有名店の味を再現

「無人の自販機で1000円の商品を売るというのは、前例がなかったようです。ただ、送料を加えると、もっと高い値段でラーメンが売れていたことを通販の事業で知っていましたので」

何より苦労したのは、コラボした有名店のラーメンをいかに冷凍で再現するか、だった。使われていた麺は、丸山製麺の麺ではない他社製の麺。それでも、店から求められるのは同じ味だ。

「幸いだったのは、自社内に麺の開発部隊を持っていたことです。お店で味見をし、店主や代表からOKが出るまで、大変な試行錯誤をしながら、それぞれの有名店の麺を再現していきました」

取材・文 上阪 徹
写真提供 株式会社丸山製麺


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本記事は、月刊『理念と経営』2024年 2月号「特集1」から抜粋したものです。

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