『理念と経営』WEB記事

いちばん大事なのは、 「やり続けること」だ

ケアプロ株式会社 代表取締役 川添高志 氏

それでもあきらめなかったのは、私たちのやっていることが間違っているとは、どうしても思えなかったからです――。

向かい風を追い風に変える

―川添さんは2007(平成19)年にケアプロを立ち上げた直後に、宅急便という画期的なサービスでヤマト運輸(現・ヤマトホールディングス)を窮地から救った小倉昌男氏の『経営学』と出合い感銘を受けたそうですね。どこに惹かれたのですか。

川添 規制があるからとあきらめず、敢然と立ち向かった経営者としての姿勢です。小倉氏はビジネスに大義があれば岩盤のような規制にも穴を開けられると証明してくれた。それがどれほど私の心の支えになったことか。

―川添さんも同じような境遇に身を置かれていたのですね。

川添 私たちが始めた自己採血によるセルフチェックには、法律的にグレーの部分が当時はまだ残っていました。だから行政としては認めたくなかったのでしょう。保健所の職員からは「続けるなら警察に告発する」とまで言われました。また、健康診断の受診者が減ることを恐れた医師会からも「病院を潰す気か」と圧力が絶えず、精神的に追い詰められていたのです。

―それでもあきらめなかったのはなぜですか。

川添 本来成人であれば受けなければならない健康診断を1年以上受けていない人が、日本には3000万人超います。そういう人たちに手軽に検査できる機会を提供する事業が間違っているとは、私にはどうしても思えなかったのです。おそらく小倉さんも、そういう気持ちだったのではないでしょうか。― その小倉さんは運輸省(現・国土交通省)や郵政省(現・日本郵政グループ)の官僚たちと激しくやり合い、自分の意見を認めさせました。

川添さんはどうやって難局に対処したのですか。

川添 行政に対してはお客様が味方になってくれました。検診を行っているところに保健所の担当者がやってきて、あれこれ難癖をつけてくると、お客様が「自分は検査を受けに来たんだ。保健所は邪魔するな」と、私たちに代わって追っ払ってくれたのです。病院のほうはこちらから足を運んで直接話を聞き、誤解を解いて回りました。私たちのお客様はもともと健康診断を受けない人たちだから、受診者を奪うことにはならない。検診で異常が見つかったら医療機関を受診するよう指導しているので、病院経営にとってはむしろプラスになる。そうやって丁寧に説明していくと、じゃあチラシを置いていってくださいと、逆に味方になってくれる人も出てきました。病院に関しては、戦わずに向かい風を追い風に変えていくという戦略が功を奏したといえます。

取材・文 山口雅之
写真提供 ケアプロ株式会社


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本記事は、月刊『理念と経営』2024年 1月号「特集2」から抜粋したものです。

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