『理念と経営』WEB記事

新規事業は9割が失敗する (沼田流失敗からより多くの糧を得る方法)

株式会社町おこしエネルギー 代表取締役会長兼社長 沼田昭二 氏

失敗は若いうちに!

自社開発の商品とフランチャイズシステムを強みに、全国1000店舗以上を展開する「業務スーパー」。その運営会社である株式会社神戸物産の創業者である沼田昭二さんが、長男の博和さんに事業承継したのは2012(平成24)年のことだった。

現在、株式会社町おこしエネルギーの代表として、地熱発電などの再生エネルギー事業に力を入れている沼田さんは、神戸物産の経営のバトンを当時31歳だった博和さんに託した理由を次のように語る。

「若いときの失敗というのは、非常にいい勉強になるんですね。『失敗』自体はできればしないほうがいいものですが、そこから学ぶことはやはり多い」

ただ――と彼は続けるのである。

「30代での失敗と50代での失敗は異なります。30歳で得た失敗からの学びは、その後の30年以上は使えるわけですが、50代での失敗は同じだけ損をしても10年程度しか使えないからです。さまざまな失敗から学ぶことによってこそ、次にもっと大きな事業で勝つことができる」

つまり、若い頃にこそ人は『失敗』を恐れてはならない――というわけだ。

心に留めてきた原則

沼田さん自身が起業したのも31歳のときだった。26歳で10万円の資金を元に軽トラックでの行商を始めたことを振り出しに、1985(昭和60)年に食品スーパー「フレッシュ石守」を創業した。それが後に業務スーパーの事業を大きな成功に導き、神戸物産という年商4000億円超の上場企業を育て上げる最初の一歩となった。そんな沼田さんには、そのなかで培った彼ならではの「失敗」についての考え方がもう一つある。

「バブルが崩壊した90年を過ぎた頃から、何をしても利益が出る時代は終わりました。そのなかで私が常に心に留めていたのは、『新規事業は9割が失敗する』という原則でした」

例えば、彼にそのことを強く意識させたのは、日本の小売業の一時代を築いたダイエーの盛衰だ。バブル崩壊後、ダイエーの業績は悪化の一途をたどり、結果的に店舗の大量閉鎖を余儀なくされていった。沼田さんはその様子を見つめながら、「商品を右から買って左に売る時代は終わったこと」を強く意識したと振り返る。

「それまでの私は、ダイエーさんが半永久的に日本の流通を制圧するものだと思っていました。しかし、バブルが弾けた後、それほどの会社の事業が壁にぶつかり、結果的に(イオングループに)吸収されてしまった」

そこで沼田さんは食品メーカーについて勉強を始め、中国を訪れて活路を探した。それが後に自社商品の製造加工、販売までを自社グループで行う業務スーパーの手法につながった。

取材・文 稲泉 連
写真提供 株式会社町おこしエネルギー


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本記事は、月刊『理念と経営』2023年 9月号「特集1」から抜粋したものです。

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