『理念と経営』WEB記事

「男性だけが戦力」の組織を変えた、“人にフォーカスした経営”

株式会社光機械製作所 代表取締役社長 西岡慶子 氏

「男性が本業を担い、女性は補助的な事務をやっていればいい」――そんな不文律がまかり通っていた時代がある。多様性への取り組みで、同社を誰もが戦力として活躍できる組織に変えた西岡さんは「企業は人がすべて!」と力を込める。

男性偏重の組織で失われていた人間力

社員のほとんどが男性だった職場は、社長の交代とともに大きく変わった。今や設計・開発など、ものづくりの主要部門で女性が3割を占め、外国人社員も全社で1割になる。ダイバーシティ経営を実践、人材育成に力を入れ、「人にフォーカスした経営」で高収益企業に生まれ変わったのが、三重県の工作機械メーカー・光機械製作所だ。

2014(平成26)年には「APEC女性活躍推進企業50選」に選出。社長の西岡慶子さんは、21(令和3)年に男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰を受賞している。

「企業は人がすべてだと思っています。ただ、技術だけがあればいいというわけではありません。仕事への思いや哲学をしっかり持っていなければ、プロフェッショナルとは呼べないのです。人間力をしっかり持った人材を育てていくことが大切だと考えています」

同社は、1946(昭和21)年に西岡さんの祖父が創業。2001(平成13)年に3代目社長に就任した。3人姉妹の長女で、会社の将来を気に掛けながらも、外資系企業に就職。英語力を生かして通訳の仕事をしていた。職場で出会ったアメリカ人と結婚、幸せな日々を過ごしていたが、30代後半で夫が急逝する。

「このとき、会社をよく知る人から『あなたの夫はあなたを育てて、お父さんに返したんでしょう。会社はあなたが継ぐといい』という言葉をもらったんです。それで、迷いながらも会社を継ぐことを決めました」

プロの通訳として、世界のエクセレントカンパニーをたくさん見てきた。本物のプロフェッショナルにも数多く出会った。それだけに、入社後には衝撃が走った。男性ばかりで、風通しの悪い風土。威圧的なリーダーがいて、異なる意見も言い出しにくい雰囲気。

「こんな多様性のない環境の下では、イノベーションは生まれないと思いました。グローバル化が進み、当時は中国企業が台頭していたので、見学に行ったんです。そこでは、工学的なバックグラウンドがない若い女性が工作機械を扱っていました。このまま偏った視点のマニアックな機械を作っていては、生き残ることは難しくなると思いました」

しかも社内では不正が行われていたことが発覚する。何もしない選択肢もあったが、裁判に打って出た。何より正しい仕事をすることの大切さを社内に発信したかった。またこれが、取引先の信頼にもつながると思った。

「大変でしたが、これを乗り越えたから今があると思っています。正しいことをしていこうと、自信を持って言えるようになった」

そして会社を変えるために西岡さんが取り組んだのが、社内に多様性をつくり出すことだ。真っ先に思い浮かんだのが、女性の採用。

「女性の仕事が…



同社の工作機械は、多様な社員の多様な意見を取り入れて改良を重ねたことで進化を遂げていった

取材・文 上阪徹
写真提供 株式会社光機械製作所


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本記事は、月刊『理念と経営』2023年 8月号「特集2」から抜粋したものです。

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