『理念と経営』WEB記事

“管理しない”リーダーが「場」の創造性を育む

中央大学ビジネススクール 戦略経営研究科長 露木恵美子 氏

今年3月、WBCで侍ジャパンが世界一に輝き、選手一人ひとりの良さを引き出す栗山監督の采配が話題となった。では、「社員それぞれが創造性を発揮する職場」をつくり出すリーダーの要件とはいったい何だろうか? 現場のビジネスパーソンと共に組織づくりを研究する露木さんは、「むやみに管理しない“場のリーダーシップ”が求められている」と語る。

場づくりのカギは“身体で感じる”こと

――創造的な職場をつくり出すために、リーダーがするべきことは何でしょうか。

露木 具体的な話に入る前に、まずは「場」という考え方について理解しておくといいと思います。

日本人は「場違いだ」とか「場が盛り上がる」など、「場」という言葉をよく使います。英語に直訳すると「Place」「Field」「Space」ですが、これらは単なる物理的環境という意味合いが強く、日本でいう「場」とは少し異なります。例えば、そこにいる者同士の波長が合うと議論が活発になることがあります。そうした“人と人との関係性”を含んだものを「場」と呼ぶのです。

――その日本的な「場」の良しあしを左右する要素は?

露木 もちろん、コミュニケーションは重要な要素です。しかし、コミュニケーションには「言語的コミュニケーション」と「情動的コミュニケーション」の2つの側面があることを意識する必要があります。というのも、言語だけで行うコミュニケーションはとてもパワフルで大切なものですが、それだけに頼っているとコミュニケーションの質は高まらないからです。

対して、情動的コミュニケーションは、五感を含む身体全体で無意識に環境を認識しながら行います。例えば、会議室に入った瞬間、「今日の会議は上手くいきそうだな」「今日は盛り上がりそう」などと一瞬にしてその「場」を感じることがあると思いますが、これはまさに情動的なコミュニケーションから生まれる感覚です。この2つのコミュニケーションを大事にすることによって、「場」の状況がよくなっていくのです。

――オンラインによる仕事の機会が増えましたが、重要な商談などは対面でのやり取りが多いですね。

露木 創造的なアイデアを出すためには、オンラインだけでは難しいです。なぜなら、同じ「場」にいないと身体と身体が無意識に反応し合う情動的コミュニケーションがうまく働かないからです。
 また、自分の考えを言葉にすることは意外に難しく、自分の中にある漠然とした思いを言語化するためには、情動的な感覚を含む人と人とのやり取りが必要です。そうしたやり取りの中で自分の心が動き、自分の考えが形になっていくのです。

――では、創造性を生み出す「場」をリーダーはいかにしてつくり出せばよいのでしょうか。

露木 ポイントは3つあります。…



図作成:編集部

取材・文 長野修


この記事の続きを見たい方
バックナンバーはこちら

本記事は、月刊『理念と経営』2023年 6月号「特集2」から抜粋したものです。

理念と経営にご興味がある方へ

SNSでシェアする

無料メールマガジン

メールアドレスを登録していただくと、
定期的にメルマガ『理念と経営News』を配信いたします。

お問い合わせ

購読に関するお問い合わせなど、
お気軽にご連絡ください。