『理念と経営』WEB記事
企業事例研究1
2023年 6月号
みんなが主役となり、新しい一歩を創る

フットマーク株式会社 代表取締役社長 三瓶 芳 氏
東京都墨田区に本社を置くフットマークは、押しも押されもせぬ学校用水泳用品のトップブランド。そのものづくりは、お客様の声を丁寧に聴くことから始まる。
なぜ「1部門5人制」を敷くのか?
フットマークの創業は1946(昭和21)年である。赤ちゃんのおむつカバーなど、ゴム引布製品の製造を始めた。
会社のロゴは赤ちゃんの「あしあとマーク」だ。赤ちゃんが人生の第一歩を記して立ち上がるように、自分たちも新しいものを創造する自主自立のものづくりをしようとの気概を込めているという。
やがて同社はスイミンググッズ、介護用品など、撥水性、防水性の素材を活かしてさまざまな製品をつくりだすようになった。その数は、延べ2万品目にも及ぶ。
――資料を読んでいて、社員一丸となってものづくりをしている会社だという印象を持ちました。
三瓶 嬉しいですね。そういう会社でありたいと思っているんです。
― 会社の「あしあとマーク」はいつから、お使いなんですか?
三瓶 マークとして正式に登録したのが1967(同42)年ですから、もう50年以上になりますか……
―ところで三瓶さんの入社はいつですか?
三瓶 80(同55)年です。スポーツが好きでスポーツ関係のメーカーに就職したいと思っていまして、たまたま求人誌を見て小さいけどスポーツのものづくりをしているということで入社したんです。
― そのとき、創業者のご長男で当時の磯部成文社長(現会長)に言われた言葉があるそうですね。
三瓶 ええ。「社員は一人ひとりが寿司職人になってほしい」と言うんです。まだ社員12人くらいの会社でしたから、本当に寿司職人のように自分で仕入れて、握って、お客様に提供する感じで1人何役もやらないと会社が回りませんでした。実際に、お客様と接している自分たちで開発もやり、製造を手伝い、納品もしていました。
今では社員は56人に増えましたが、今も同じで、「全員経営」を掲げてやっています。そのために1部門5人ほどの組織にして、毎月、部門単位の経費や収益など決算の内容を全部“見える化”しています。
―なぜ5人なんでしょう?
三瓶 会議で誰もが当事者意識を持って発言でき、みんながものづくりの主役になれるのは最大でも5人くらいだろうと思うんです。
―今は何部門あるんですか。
三瓶 16ですか。学校教育事業部、スポーツ事業第一部、第二部とかですね。それぞれの部門の独立採算というか、社内では「目標実現経営」と呼んでいるんですが、各部門で開発目標などを決めて自由にやっています。
―三瓶さんの決済は?
三瓶 要りません、要りません。
一人の人に喜んでもらえるものをつくる
東京五輪(1964年)の後、全国の学校にプールが整備され、スイミングスクールができるようになった。フットマークではいち早く水泳帽子の製造を始め、学童用としては国内トップシェアを誇るまでになった。
同じ頃、近所のお嫁さんから「うちのおじいちゃんがお漏らしをするようになって困っている。大人用のおむつカバーをつくれないか」という相談を受けた。すぐに応え、これが介護用品製造のきっかけとなった。
こうして、8対2の売り上げ比ながら、水泳関連と介護用品の2本柱ができたのだった。
本社1階にある展示コーナー
取材・文 中之町 新
撮影 鷹野 晃
本記事は、月刊『理念と経営』2023年 6月号「企業事例研究1」から抜粋したものです。
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