『理念と経営』WEB記事
特集2
2023年 5月号
対等なパートナーシップを築けているか?

株式会社木幡計器製作所 代表取締役 木幡 巌 氏
企業連携で新商品開発にこぎつけた。その経験を生かして新たに挑んだ医療分野への参入。志を共有し伴走してくれた医療関係者の存在によって医工連携を推し進めることができた。
脱・自前主義で閃いた「後付けIoT」の発想
木幡計器製作所は、1909(明治42)年創業の老舗の圧力計メーカーだ。市場は寡占化が進みわずか十数%の市場を二十数社で奪い合う厳しい業界。新たな活路を見出すにも、100年以上変わらない圧力計の世界でどんな新たな付加価値を生み出せるのか、木幡巌社長は答えが見出せず苦しんだ。
そんななか、あるホテルの駐車場に取りつけられていた圧力計が5年以上壊れたまま放置されている現場に遭遇。「安心・安全・信頼」が求められる圧力計であるにもかかわらず、熟練メンテナンス技術者の不足や巡回点検にかかる管理コストの高いことが、こうした現状を生み出していた。そのことに気づいた木幡社長は、試行錯誤を繰り返しながら、2018(平成30)年に「後付けIoT センサ・無線通信ユニット『Salta(サルタ)』」を開発。圧力計に外付けして、磁気センサで計器の針の角度を検出し、そのデータを送信し見える化することで点検業務の簡素化を実現。現在は主力製品の一つとなった。
後付けIoT センサ・無線通信ユニット『Salta(サルタ)』
この開発の力になったのが、「関西積乱雲プロジェクト」と呼ばれる、優れた要素技術を持つ中小企業が集まるコンソーシアムに参加したことだった。
「ITとかDXは、センシング技術、ソフトウエア技術、ハードウエア技術、通信技術など、非常に多岐にわたる要素技術が必要です。中小企業はそれぞれの分野にエキスパートがいます。その強みを持つ中小企業が連携することで大企業にはできないことも可能となります。今までの日本企業は、自前主義が強かったですが、これからの時代はまさに〝連携〞こそが重要だと思うのです」
〝企業連携〞によって新製品を生み出した木幡社長が次のチャレンジとして選んだのが〝医工連携〞だった。
自社の強みを生かした「提案」が欠かせない
きっかけは偶然だった。一人のトランペット奏者から依頼された「吐く息の圧力を測定する計器がほしい」という要望に応えて製作した計器を、自社のホームページに掲載したところ、複数の大学の医療関係者から問い合わせが来たのだ。
呼吸筋力測定器
取材・文 長野 修
写真提供 株式会社木幡計器製作所
本記事は、月刊『理念と経営』2023年 5月号「特集2」から抜粋したものです。
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