『理念と経営』WEB記事
特集1
2023年 4月号
全社で学ぶ仕組みを整え、AI時代を切り拓く

西川コミュニケーションズ株式会社 人事責任者 神谷昌宏 氏
リスキリングが注目される前から学び直しによって時代を生き抜いてきた企業がある。「電話帳の会社」として知られる西川コミュニケーションズだ。いまや売り上げの半分を非印刷事業が占める。多くの社員が文系出身という中で、AIやデジタルを使いこなせる人材をどのように育てたのだろうか?
新たな価値を創るべくデジタル人材を育成
西川コミュニケーションズは、1906(明治39)年に創業した老舗の印刷会社だ。事業の柱だった電話帳の印刷が、固定電話加入数の減少とともに激減。新たな活路を求めて、ダイレクトマーケティングや情報機器の販売や書店の運営など他業種にも挑戦し、試行錯誤を続けてきた。
人事責任者として教育施策の立案などを担当する神谷昌宏さんは、その後の挑戦についてこう話す。
「紙の印刷物は主力事業ではありますが、新しい付加価値を創造しなければ、時代の変化には対応できません。そこで私たちは、全社員の学びに力を入れることを決意したのです」
2013(平成25)年からスタートしたのが、社内の「教育プロジェクト」。これはITに特化したものではなく、幅広く情報リテラシーやロジカルシンキングやリーダーシップを身につけるための取り組み。さまざまな研修や課題図書による学びをスタートした。
AI学習に力を入れ始めた2018年の勉強会の様子
人材育成のあり方が大きくシフトしたのが2016(同28)年。3DCG事業をゼロから立ち上げることになったのだ。協力会社とタッグを組んで推進するつもりだったが、適材の協力会社や人材が見つからなかったことから、自らの会社で人材を育成することにした。
「公募で5人の社員が参加しました。最初の3カ月は専門学校に通ってもらい、その後半年間は、専門家による月3回ほどの講習と課題の中で学びを深めました。その期間は実務をせず、ひたすら学ぶだけ。思い切った施策によって、1年後には3DCG事業を立ち上げることができました」
また、この頃同時に、全社員に経済産業省認定の国家資格「ITパスポート」の取得を義務付けた。研修費用も受験費用も会社が全額負担し、現在では約7割の社員が取得に至った。
さらに2018年には、ディープラーニングの基礎知識があることを認定する「G検定」の取得を推奨。あらゆるサービスの中核にAIを関連づけることが狙いだった。
「レベルが高い認定試験なので、当初は取得が進みませんでしたが、社長自らが先陣を切って取得したことで挑戦者が増え、当時は80人ほどが取得できました」
メタバースプラットフォーム「MetaRoBa」。同サービスを活用すれば、バーチャルレビュールームで3Dの製品完成イメージを360°確認でき、開発期間の短縮やコスト削減にもつながる
取材・文 長野修
写真提供 西川コミュニケーションズ株式会社
本記事は、月刊『理念と経営』2023年 4月号「特集1」から抜粋したものです。
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