『理念と経営』WEB記事

自ら考え行動する力を、仕事を通じて醸成する

株式会社米五 代表取締役 多田健太郎 氏

永平寺御用達の味噌メーカーとして知られる同社。老舗企業でありながら20代の社員も多く、若い人たちにも味噌を楽しんでもらう工夫や取り組みを行っている。12代目・多田健太郎社長は若手社員をどのように育てているのだろうか?

提案から売り上げまで考える「練習」をさせる

福井県の味噌メーカーである米五は、創業1831(天保2)年の老舗企業だ。永平寺の御用達として知られ、県内の学校の給食にも同社の味噌が使われている。発酵食品を楽しめる「みそ楽」の運営なども行い、試食のできる明るい店舗を持つ企業である。

味噌や「老舗」というイメージとは裏腹に、社員数29名の同社の年齢層は若い。2021(令和3)年に社長就任した12代目の多田健太郎さんは現在39歳、社員の多くも20~30代で構成されている。そうした若手社員の育成について、多田さんはどんな考えを持っているのだろうか。

「私が若手社員に対して望んでいるのは、“自立”した社員になってくれることです。若い社員が自分で考え、自分で最後までやってみる力を持つこと。そういった力をとにかく育て、身に付けていってほしいと思っています」

そのために同社では、カフェや店舗、工場などに数値目標を設定した上で、「それぞれの社員が何をしたか」「その結果をどう考えたか」に注目して評価しているという。

例えば、年間2000万円の売り上げを、2400万円にするという数値目標があったとする。その際、カフェを担当する社員であれば、「フリーズドライの味噌を開発・販売してはどうか」、店舗の社員であれば「パッケージを新しくしてはどうか」といった提案を行うことになる。

では、フリーズドライの味噌を売り出した時、売り上げにはどれくらいの寄与があるのか。単価や目標達成に必要な売り上げ個数はいくつなのか――。単にアイデアを出すだけではなく、そうした説明をしっかりできるようになることが大切だと多田さんは考えている。

「実際の売り上げの責任は経営者や部長クラスが取る。一方で提案が商品の売り上げに結びつかなくても、その社員が『なぜそうだったか』をしっかり考え、どのように課題に取り組んだのかを常に見るようにしているんですね」

ただ、各部署での数値目標にあまりこだわり過ぎると、部署間の交流や一体感が失われるという課題もある。よって、多田さんは社内の評価の仕組みについて、他部署との連携をいかに評価に反映させるかなど、常に試行錯誤を続けているという。

「私はそうした目標を立てて提案をし、売り上げを考えることが若手社員にとっての『練習』だと捉えています。いずれ彼らが部長クラスになっていく時、自分で考える力こそが重要になってくる」

それに――と多田さんは続ける。

「最終的に提案から売り上げにまで責任を持つという経験は、彼らがたとえ別の会社で働くようになったとしても、必ず役に立つスキルになるでしょう」



味噌を楽しむテーマパーク「みそ楽」。商品販売のみならずカフェや体験教室などもあり、米五の魅力を存分に味わうことができる

取材・文 稲泉連
写真提供 株式会社米五


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本記事は、月刊『理念と経営』2023年 3月号「特集2」から抜粋したものです。

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