『理念と経営』WEB記事

採用担当者に求められる “ファンづくり”のマインド

株式会社土屋鞄製造所 人事本部 人材開発課 課長 西島悠蔵 氏

ランドセルメーカーとして絶大な人気を誇る土屋鞄製造所は、いま海外展開を視野に入れ、多様性のある組織づくりを急いでいる。採用時に心がけているのは、土屋鞄の価値観を伝えることだという― 。

コロナ禍を「千載一遇のチャンス」に

私が当社の新卒採用に本格的にかかわるようになったのは2021(令和3)年卒からです。

もともと土屋鞄には一定数のコアなファンがおり採用人数も多くなかったため、これまでは自社のホームページといくつかの大学で説明会を開くくらいで事足りていたといいます。

しかし、近年は会社が新たなフェーズに入り、海外展開などにも積極的に取り組むという経営方針が打ち出され、それに対応できる多様な人材が必要になってきました。それを確保せよというのが私に課せられたミッションだったのです。

そのためには土屋鞄のことを知らない層にもアプローチして認知を広げなければなりません。それで、これまでやってこなかった対面での採用説明会や座談会、ワークショップを全国で開催することにしました。ところが、準備を始めた矢先に、新型コロナウイルスの流行が始まったのです。

緊急事態宣言で外出が制限されるようになり、多くの会社が募集人員を減らしたり採用自体を見送ったりするなか、私は逆にこれを千載一遇のチャンスととらえ、すべての選考をオンラインに切り替えて採用活動を継続することにしました。

とはいえ、オンラインだけで採用を行うのは私自身も初めての経験ですから、何が正解かわかりません。試行錯誤しながら最適な方法を見つけていったというのが正直なところです。

オフライン用につくった資料がそのまま使えないというのは、すぐに判明しました。スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションのように、オフラインの場合はその場の雰囲気に合わせて話す内容を変えるなどの説明ができるので、資料には要点だけを簡潔にまとめておけばよかったのです。

一方、オンラインだと、話し手が熱く語ってもなかなか耳を傾けてもらえません。それゆえ、大事なことは資料に丁寧に書き込み、さらにそれを読ませる工夫も必要になってきます。

SNSも認知度を高める武器になるとわかってはいたものの、効果的な使い方にたどり着くまでにはそれなりに時間がかかりました。

結果的に最も有効だったのはTwitterのDM(ダイレクトメッセージ)です。説明会のあとに「ここをもっと知りたい」と思ったとき、Twitterのアカウントがあれば学生はDMで質問することができます。コロナ禍で自由にできなくなったOB、OG訪問の代わりを、TwitterのDMが果たしてくれたのです。

採用活動がブランディングに直結

会社の雰囲気やカルチャーのようなソフトの部分は、オンラインだけではなかなか伝わりません。なので、できるだけ面接の回数を増やす、それから、人事以外の部門の社員とのカジュアルなコミュニケーション機会を設け会社を多面的に見てもらうといった対策でカバーしました。

取材・文 山口雅之
撮影   富本真之


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本記事は、月刊『理念と経営』2023年 3月号「特集1」から抜粋したものです。

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