『理念と経営』WEB記事

経営者が死にものぐるいでやれば、 神様がご褒美をくれる

株式会社今治.夢スポーツ代表取締役会長 岡田武史 氏

日本が世界に誇るサッカーの名監督・岡田武史さん―。2014年からはFC今治を運営する「株式会社今治.夢スポーツ」の代表取締役となり、経営者としての道を歩み始めた。その岡田さんが、去る10月9日に開催されたイベント「MED2022」(一般社団法人「みんなが みんなで 健康になる」と、「シンクタンク・ソフィアバンク」が共催)に登壇し、「夢・志をカタチにする力」と題したトークセッションを行った。以下は、イベント終了後に本誌が行ったインタビューに、トークセッションでの発言も加味した内容である。

40億円の資金調達達成までに、乗り越えてきた壁

― 岡田さんが「FC今治」のオーナーになられた当初、地元の人々に受け入れられるまでには地道な積み重ねがあったそうですね。

岡田 今治に来て2年目くらいに、当時のスタッフに「君たち、今治に友だちいるのか?」と聞いたら、みんな「いません」と言うんですよ。一人を除いて県外出身でしたしね。それで、「1カ月以内に、地元の友だちを一人5人ずつつくること」と厳命したんです。
そこから、僕自身も含めてみんなで、地元の人々に溶け込む努力を始めました。フットサルチームに入ったり、「孫の手活動」と銘打って、地元のお年寄りに「困ったことがあったら言ってくださいね」と言って回ったり……。その活動には僕も何回か参加しましたけど、「あそこの木を切ってくれ」とか「重いものを運んでくれ」とか、いろんなリクエストに応じるんです。そうしたことを続けるうち、「こんどサッカー観に行くわ」と言ってくれる人も増えていきました。

―コロナ禍でもFC今治が黒字を続けた一つの要因が、そうした地道な積み重ねにあるのですね。

岡田 それはほんの一例で、ほかにも地元に仲間を増やすための取り組みを、あの手この手で行ってきました。教育事業として「野外学校」を行ったり、「Bari ChallengeUniversity」という起業家養成プログラムを始めたり……。うちの会社は、単にサッカークラブの経営をしているだけではありません。
今治に人々が集う豊かなコミュニティをつくろうとしているんです。そのコミュニティが「今治モデル」になって、各地にスポーツチームを核としたコミュニティが生まれるきっかけになればいいと考えています。

―そのための舞台となる「里山スタジアム」が、2023年1月に竣工予定です。サッカーの試合を行うのみならず、里山のように人々が集う場所を目指されているそうですね。40億円という巨額の資金調達にはご苦労なさったかと思いますが……。

岡田 はい。当初、地元の財界の方からは、「コロナで苦しいなか、今治での資金調達は無理だ」と言われて、東京のスタートアップ経営者などから営業を始めたんです。
東京で資金調達が進んでいくようになると、次第に今治の経営者などからも「地元のわしらが何もせんわけにはいかんから、ぜひ出資させてくれ」という声が上がり始めて、資金調達が軌道に乗ったんです。もっとも、40億円の半分は金融機関からのプロジェクトファイナンスなので、竣工後の返済もまた大変な挑戦になりますが……。」

企業理念を羅針盤にして進んできたからこそ

岡田 うちの会社は、人材確保にまったく苦労していないんですよ。すごい一流企業から、給料は大幅に下がるのにうちに転職してきてくれる優秀な若者がたくさんいるんです。いまの若い人は、給与の高さよりも文化的な豊かさ、一緒に追いかける夢を求めて会社を選ぶんですね。そのことはすごく感じています。

取材・文 本誌編集長 前原政之
撮影 編集部


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本記事は、月刊『理念と経営』2023年 1月号「編集長Interview」から抜粋したものです。

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