『理念と経営』WEB記事
特集
2022年12月号
経営者とクリエイターが共創する場「プロコワ」

株式会社ジェイプロ 代表取締役 久米由浩 氏
愛知県名古屋市にあるコワーキングスペース「プロコワ」。ここでは、クリエイターと経営者が出会い、事業の課題解決をしたり、ともに新たな事業に挑戦したりする異業種連携が行われているという。なぜこのような場を創出したのだろうか。
コロナ禍で場所貸しから事業創出の場所へ
事務所や打ち合わせスペースなどを共有するシェアオフィスやコワーキングスペースが増えている。だが、名古屋にある「プロコワ」は、少し違う。20年の経験を持つ映像プロデューサーが作った、利用者同士、さまざまなつながりが生まれる異色のコワーキングスペースなのだ。
「CMなどの映像制作は華やかさもあり、やりがいのある仕事ですが、一方でパワーバランスが歪むことも多いんです。我慢することも少なくなく、結果的に個性を失ったり、才能が消えてしまったりするクリエイターをたくさん見てきました。これまでとは違う働き方ができる場所を作れないか、と考えていたんです」
こう語るのは、2018(平成30)年に「プロコワ」をオープンさせた久米由浩さん。受賞歴もあり、名古屋では知られたクリエイターの一人だ。だが、コワーキングスペースのビジネスを手がけたことはない。周囲も心配し、自身も手探りでの運営が続いたという。転機となったのは、コロナ禍だった。
「多くの人のマインドが変わりましたよね。これまでと同じことをしていても通用しない。自分たちで新しいことをやっていかないといけない。何かアクションをしないとまずい……。そんな中で、自分からもっと前に進みたいという自立的な人たちが集まってくるようになったんです」
久米さんが持っていたキーワードの1つが、フラット。序列的な仕組みの中で仕事をするのではなく、クライアントもクリエイターも、みんながフラットに仕事をする。フリーランスでチーム編成をしよう。横のつながりで働こう。経営者と同じテーブルで同じ未来を見よう――。久米さんのそんなメッセージに、多くのクリエイターに加え、経営者も反応。新たなつながりが生まれていった。
「大事なことは、一緒になって作っていく、ということなんです。それは、クライアントのためにもなるし、クリエイターのためにもなる。まさに共創です」
実際、中小企業経営者や事業主も、自ら動いていかなければいけない時代が来ている。
「例えば、中小企業の経営者が今までやったことのなかったECサイトをどう作るか。SNS発信をどうしていくか。守りに入るのではなく、ここから新しいことにチャレンジしていきたい。僕たちは、そういう企業の力になりたいんです」
「プロコワ」には、1日約30人の異業種の人々が集う。利用者の約7割がクリエイターだが、3割は経営者や事業主だという
取材・文 上阪徹
写真提供 株式会社ジェイプロ
本記事は、月刊『理念と経営』2022年12月号「特集」から抜粋したものです。
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