『理念と経営』WEB記事
特集2
2022年11月号
「1.5次流通」でフードロス削減に挑戦

株式会社クラダシ 代表取締役社長 関藤竜也 氏
「もったいないを価値へ」をモットーに、ロス削減に取り組む同社。社会貢献とビジネスを両立させるのは難しいと言われる中、今年6月期の売上高成長率は前年同期比123%を記録した。なぜ『Kuradashi』はそれほど多くのメーカーやユーザーに愛されているのだろうか?
社会貢献型ビジネスの根底は「三方良し」
関藤竜也社長が代表を務めるクラダシのECサイト『Kuradashi』を見ると、目移りしそうなほど多くの加工食品ブランドが並んでいる。価格はどれも値引きされており、中には70%オフという商品も。これらはすべて賞味期限が近いなど、これまでは廃棄されてきたものだ。
この「ソーシャルグッドマーケットフードシェアサイト」の利用者は35万人、協賛企業は990社を超え、販売価格の一部は社会貢献活動団体に寄付されている。その金額は累計で8500万円以上にのぼり、起業以来約1万t 近くのフードロスを削減してきたという。
「持続可能な社会を目指すためには、消費者、生産者、メーカーの“誰かが我慢する”という仕組みでは成り立たないので、社会性・環境性・経済性を包括した仕組みが必要です」と関藤社長は話す。
この言葉通り、同社のサービスの根底にあるのは「三方良し」の視点――ユーザーはお得な価格で商品を購入でき、メーカーはブランドを毀損せずに廃棄を減らし、CSR活動のメッセージを社会に伝えられる。そして売り上げの一部が社会貢献活動団体に寄付されることで、誰もが気軽に参加できて、「損」をしない「エシカル消費」(個人が社会や環境に配慮した消費を行うこと)を促すビジネスモデルになっているのだ。
写真提供:株式会社クラダシ
「俺がやらんで誰がやんねん」の熱き思い
関藤社長が「フードロス」という社会課題をビジネスにつなげたのは、前職の商社時代の1998(平成10)年頃、社費留学を機に、計3年間中国に駐在をした時に見た光景がきっかけのひとつだったという。
「地方の貧しい村に行くと、少数民族の人たちは一羽の鶏を絞めて、余すところなく使っている。一方、僕らは中国で加工した商品が少しでも規格が違えば、何t という量を一度に捨てているわけです。その状況を目の当たりにして、このままでは地球環境がダメになってしまうと確信しました」
一方、日本の食料事情はどうか。日本は海外から食品の約6割を輸入しているにもかかわらず、「年522万t 以上が廃棄されるフードロス大国」であることがわかった。例えば、食品業界には「3分の1ルール」という商慣習がある。食品の納入期限を賞味期限の3分の1以内にする」というものだ。賞味期限を3か月とする食品の場合、メーカーや卸は、製造後1か月以内に卸を通して食品を小売店まで納品しなければならないのである。
こうした商慣習の中で大量に廃棄されているフードロスを救済するには、市場価格もメーカーのブランドイメージも毀損しない全く新しい流通市場の形成が必要だと思い、関藤社長は「1.5次流通」を生み出した。それこそが、全く新しい流通市場、ソーシャルグッドマーケット『Kuradashi』だ。
「僕は商社時代に原料から最終製品に至るあらゆる工程を見てきました。フードロスの課題解決にはその経験が活かせる。みんなが素通りしてきたこの問題を前にして、『俺がやらんで誰がやんねん』という思いがありましたね」
ECのシステムを構築する傍ら、彼は協賛企業を獲得するために東奔西走した。
取材・文 稲泉連
撮影 編集部
本記事は、月刊『理念と経営』2022年11月号「特集2」から抜粋したものです。
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