『理念と経営』WEB記事

讃岐うどん文化を通じて「関係人口」を増やす

瀬戸内ワークス株式会社 代表取締役 原田佳南子 氏

香川県三豊市に、讃岐うどん作りが体験できるUDON HOUSE(ウドンハウス)という、とてもユニークな宿泊施設がある。この施設を運営する瀬戸内ワークスの代表は30代の原田佳南子さん。のんびりとした田園に囲まれた古民家で、香川名物の讃岐うどんについて学び、味わう体験を通して地域の魅力を知ってほしい、と奮闘中だ。

地元のプレイヤー熱い気持ちを共有

原田さんの前職は楽天の地域振興事業部。多くの地方の地域再生にプロモーションという役割で携わった。三豊市に移り住んだのは2018(平成30)年と最近で、いわば〝よそ者〟だ。にもかかわらず、今や地域にすっかり溶け込んでいる。

「前職の仕事もやりがいがありましたが、プロモーションに携わるだけで何を変えられるのか、という疑問もモヤモヤと感じていました。人口減少による過疎化に悩む地域で元気を取り戻しつつある場所では、覚悟を決めた誰かが立ち上がり、行動することが起爆剤になっています。そうした人をカッコいい、と思いました。人生は一度きり。私もやりたいと2017年に退職し、1年間、具体的に今後どう動くかを考えながらフリーランスで働いていたときに、前職時代から関わっていたウドンハウスが開業に向けて運営の人探しのフェーズに入りました。それで、自分がやりたい! と手を挙げました」

つまり、三豊に来たのはいわば偶然だった。最初は1年程度で帰る心づもりでいたが、覚悟を見せるには時間も必要だとすぐに気づいた。

「実際、現場に飛び込んでみると生半可な姿勢では立ち行かないと肌で感じました。時間をかけ、責任を持って地域を盛り上げる事業に取り組もうと覚悟を決めたのです」

ウドンハウスでうどん作りを教えてくれる協力者を探し、コンセプトを練り直すなかで、地元のメンバーを集めて飲み会を積極的に開き、仲間作りにも心を砕いた。

「すると、地元のために動いている、同世代の30代、40代のプレイヤーが結構いるのに『意外と横のつながりが薄かった』なんて事情がわかりました。集まれば、夜中まで熱い議論で盛り上がり、それぞれの考えや思いがオープンになって仲間になれました。ウドンハウスを交流拠点として活用してもらい、私自身も議論に参加することで、熱い気持ちを共有できた。三豊の人たちがよそ者の私を信頼してくれるようになったのは、そうした場で覚悟を感じ取ってくれたからではないか、と思います」

地域の未来を一緒につくる

ウドンハウスは、香川の〝うどん文化〟を伝える場であって、うどん店のライバルではなくあくまでも仲間、と知ってもらうのも重要だった。

「香川県民にとって当たり前のうどん文化も、観光客には興味深い地域の文化です。よそ者の私は『讃岐うどんってエンタメだなぁ』と思います。でも、地元の人には日常だから、独特の文化であることが見えづらい。観光客にとって地域の日常は非日常です。その切り口、角度を観光化するのが、これからの観光業の一つのやり方だと思います」


UDON HOUSEの外観

取材・文 中沢明子
写真提供 瀬戸内ワークス株式会社


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本記事は、月刊『理念と経営』2022年7月号「特集1」から抜粋したものです。

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