『理念と経営』WEB記事
プレスリリース活用術 7つの心得
2022年7月号
元・日経記者が教える プレスリリース活用術 7つの心得

ジャーナリスト 大和大学社会学部教授 松林 薫 氏
中小企業が送ったところで取り上げられっこない……などと思っていたら大間違い。記者の行動原理を踏まえたうえでプレスリリース(報道機関向けの発表資料)を出せば、企業の大小を問わず、記事化の確率は高まり、ビジネスチャンスも広がるはずだ。記者が思わず書きたくなるリリース制作の秘訣とは―
「記者の行動原理」をまずは理解する
新聞・テレビなどのメディアに自社の情報を「プレスリリース」で伝える際、広報やその担当者がまず理解しておくべきことがあります。それはここ数年、メディアで取材活動を行う「記者」と企業の「広報」の関係が、大きく変わる過渡期にあるということです。
その背景の1つはメディアの人手不足。そのために以前は密だった記者と広報との距離が広がっているのです。昔であれば、記者と広報はときに飲み会などでも交流を深め、お互いに「情報を取る」「情報を売り込む」という関係性が自然に成り立っていたものです。しかし、それが可能だったのは記者一人に対する担当企業の数が、記事でよく取り上げる主要企業なら多くても5社程度と少なかったからです。
購読者の減少やメディア側の人員削減により、現在では一人の記者が主要企業30社以上を担当しているケースもある。また、新聞社自体の方針も、1つのテーマを深掘りする「調査報道」を重視しつつあります。そのため、企業が自社の情報をメディアに売り込むことが、以前よりもずっと難しくなっているわけです。
では、プレスリリースを記者に届けるために企業、特に中小企業の担当者は何を意識すればいいのでしょうか。最も大切な視点は、現代の記者の行動原理を理解することでしょう。
普段、中小企業の方と話していて気になるのは、PR会社や新聞社などが運営するウェブ上のシステムにリリースを登録すれば、情報が自ずと記者の目に止まると思っている人が多いことです。しかし、1人の記者が30社ものプレスリリースを処理している現状を考えれば、よほどの価値がなければそのプレスリリースは埋没してしまいます。
だからこそ、中小企業の広報担当者は、記者が日常業務のなかで、どのように記事としてとりあげるニュースを取捨選択しているかに意識を向ける必要があります。
ウェブだけでなく、記者クラブを活用する
記者は基本的にさまざまな「記者クラブ」を拠点に取材活動を行っています。例えば、午前中に記者クラブに行くと、その日のプレスリリースの予定が「A社が〇時に投げ込みをします」(プレスリリースの発表を記者は「投げ込む」と呼んでいます)とホワイトボードに書き込まれています。記者はそのリストを確認し、株式市場の取引が終わった15時以降に投げ込まれたリリースを合わせて、記事として取り上げるニュースを取捨選択しています。
取材・稲泉 連
写真 本人提供
本記事は、月刊『理念と経営』2022年7月号「プレスリリース活用術 7つの心得」から抜粋したものです。
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