『理念と経営』WEB記事

1つの企業の大きな成長が、活気あるまちづくりにつながる

まちビジネス事業家 木下 斉 氏

中小企業が地元のまちづくりに貢献するには、どんな視点を持ち、何から着手すればいいのか――。各地の地域活性化の実績を持つ木下氏に、そのポイントを聞いた。

まちの魅力で“外貨”を稼ぐ

これからの地方再生を考える際、大前提となる条件を私たちは承知しておかねばなりません。2025年には団塊世代全員が後期高齢者となります。さらに2050年頃には団塊ジュニア世代が後期高齢者になります。つまり、今までの人口構造を前提にしていると、立ち行かなくなるのは明白で、無策のままでは、これからの30年間、本当に大変になる、という危機感を私は持っています。特に地方の中小企業が内需依存型の経営方針でいては、厳しい時代を乗り越えるのは難しいと思います。

今後ますますローカルな企業もグローバル化の影響を受けるようになるでしょう。

強いまちづくりを目指すなら、なるべく早く、自分のまちの価値をお金に換えられる資源にできるように動いてほしい。当座しのぎでは持ちません。地元以外からの「外貨」を稼ぐことが必要です。

まず、採用方法から変革を

中小企業の強みのひとつにフットワークの軽さがあります。それを活かすためにも、時代についていけない経営者は潔く、センスを持った次世代にバトンを渡したほうがいい。私が見聞きするなかでも、30代で事業を継承してチャレンジしている企業が伸びている例が多いです。もし後継者候補がいないなら、バトンタッチするにふさわしい人を早急に探すべきです。

同時に、人材の採用方法の変革も有効でしょう。例えば、私がよく知る愛知県豊橋市の中小企業のケース。業績は悪くないのですが、地域全体で女性の人材の流出が目立っていました。求人についても、漠然と「事務職」を地元新聞で募集するだけで、良い人材が集まりにくかった。実は中小企業の「事務職」の仕事の範囲は幅広く、広報的な仕事もあります。そこで改めて仕事の内容を整理し、社内で大いに活躍できるブランドマネジャーとしてインターネットで募集したところ、優秀な方々が、地元からも、都会からも応募してきたそうです。

事務職に限らず、地域に埋没していたり、他へ流出したりしていた、実力とやる気のある人材をしっかり活かせれば、会社もまちも元気になります。

採用も時代に合ったセンスと方法で行うことが重要です。最近は経営者のTwitterやnoteなどをチェックしてから応募する入社希望者が増えており、会社の公式サイトの見直しも大切です。採用される側が判断材料にする、こうした部分も疎かにせず、しっかり取り組んだほうがいいでしょう。

業績が良い会社が組織変革をためらうのはわかりますが、余裕があるうちに、未来を見据えた次の一手を打っておくことをおすすめします。

「他人の視点」で、地元を見る

また、意識的に「他人の視点」を持つのも大切です。可能な限り、旅をして他の地域の成功例・失敗例を参考にしてほしい。いろいろ見ていると成功例・失敗例が因数分解されて、共通項を見いだせます。

取材・文 中沢明子
写真提供 本人


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本記事は、月刊『理念と経営』2022年7月号「特集1」から抜粋したものです。

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