『理念と経営』WEB記事

第19回/『超・会議術――テレワーク時代の新しい働き方』

社内会議の無駄削減こそ「働き方改革」の要

『理念と経営』2022年7月号では、「会議革命――会議が変われば、会社は変わる」という特集を掲載しています。
会議の無駄を減らし、仕事の効率を上げるヒントを探った特集ですが、その中に識者の一人としてご登場いただいたのが、本書の著者・越川真司さんです。

そもそも、「会議革命」という特集自体、本書を一つのきっかけとして企画したものなのです。
越川さんへのインタビュー記事(人気ライター・上阪徹さんが取材・執筆)にも、本書のエッセンスが生かされています。特集を読んで越川さんの取り組みに興味を持たれた方は、本書も読まれるとよいでしょう。

著者の越川慎司さんは、日本マイクロソフトの執行役員などを経て、2017年に株式会社クロスリバーを設立。同社の代表取締役CEO(最高経営責任者)を務めています。

クロスリバーは、「働き方改革」のコンサルティングを主な事業とする会社です。これまでに800社以上の働き方改革を支援してきましたが、その大きな柱となったのは会議改革でした。
というのも、クライアント企業各社の従業員(トータル16万人以上に上る)に「仕事で、あなたはどんな作業に時間を奪われていますか?」というアンケートをとった結果、1位となったのが社内会議だったからです。

《第3位がメールの処理、第2位が資料作成、そして圧倒的な1位が社内会議でした。そして驚くべきことに、お客様との会議ではなく、 社内会議のために、週の43%の時間を費やしていたのです》
《追加の調査を進めると、多くの従業員が「会議のための会議のための会議のための会議」を行い、「アジェンダ(検討項目)が設定されていない会議」や「目的がなく、会議室の椅子に座ることが目的の会議」もあることがわかってきたのです》

働き方改革といえば、「長時間労働の是正」「残業時間の削減」などがまず思い浮かぶでしょう。もちろんそれも大事ではありますが、何より、会議の無駄を減らすこと――必要のない会議をやめ、ダラダラ会議を短くするなど――こそ働き方改革の要だということが、調査で判明したのです。

そこから、クロスリバーは多くの企業の会議改革に取り組んできました。その豊富な経験を踏まえ、会議の無駄をなくし、質の高い会議にするための知恵が、本書にまとめられているのです。

大企業ほど会議の無駄は多くないが……

クロスリバーが会議改革を支援してきた企業は、おもに大企業です。本書を読むと、会議の無駄は中小企業よりも大企業で深刻であることがわかります。

《調査会社「パーソル総合研究所」の2018年の調査によると、1万人規模の企業では年間約 67 万時間、15 億円もの人件費が会議でムダになっているそうです》

大企業は規模が大きいために組織が多層化しており、各階層のすり合わせが必要なため、社内会議も多くなりがちです。また、役員に承認を得るための会議やその準備に割く時間も長く、そのことも無駄を倍加させます。

《弊社が587社に実施した調査では、役員会議の準備に時間をかけ、その効果を気にしている企業が 64%ありました。28 社に追加調査を行うと、1時間の役員会議を開催するために、現場のスタッフが 72 時間もの時間を準備に費やしていることがわかりました》

中小企業における会議の無駄は、大企業ほど多くはないでしょう。とはいえ、小さな会社でも無駄な会議に時間を取られている例は多く、本書はその改善に大いに役立ちます。

会議改革の知恵と工夫が満載の一冊

本書には、会議改革の知恵が満載です。たとえば、次のような一節があります。

《会議の目的は「情報共有」「意思決定」「アイデア出し」の3つです。1つの会議でこの3種の目的を同時に行うと、適切なアウトプットが出にくくなります。特に「アイデア出し」と「意思決定」が1つの会議の中で同時に行われると、アウトプットが出ません。(中略)
22 社で3週間の実験をしたところ、「アイデアを出す会議」と「決める会議」を分けることにより、会議時間が平均で11%減りました》

また、第3章は《会議は準備で「9割」決まる》と銘打たれ、どのように準備を進めたらよいかが解説されています。そこで強調されるのは、アジェンダを参加者が共有しておくことの大切さです。

《アジェンダは、必ず事前に参加者と共有しておくようにします。営業日基準で、会議の24 時間前までに発信しましょう。弊社がクライアント企業に提唱しているのが、「A24Bルール」です。「A24B」は、「Agenda 24 Before」の略。つまり、「会議の24 時間前までに参加者にアジェンダを送る」というルールです》

アジェンダが設定されていない会議も多いことはすでに述べましたが、それでは「何のための会議か」が明確ではないのですから、論外です。無駄な会議の最たるものといえます。

《登山をしようと思ったら、どの山の頂上を目指すのかが決まっていないといけません。目的が決まっているからこそ、それに向けた正しい手段を選べるのです。目的なしに会議を招集するのは、主催者の怠慢・自己満足です》

著者は、なくしていくべき「5ない会議」として、以下の5つを挙げます。

①    目的が明確でない会議
②    事前情報がない会議
③    当事者意識がない会議
④    アイデアの出ない会議
⑤    結論が出ない会議

こうした「5ない会議」をなくしていくことが会議改革の肝であり、本書にはそのためにやるべきことが明快に解説されています。

そのような大枠のアドバイスがある一方、会議の質を高めていくための細かいノウハウも多数紹介されます。
たとえば、会議参加者への招集メールの「件名」をどのようにしたらよいか、会議で配布する資料のフォーマットをどのようにしたら効果的か……などという工夫です。
会議全体を鳥瞰する目と、会議の細部を虫瞰する目の両方を兼備している点が、本書の大きな美点といえます。

円滑なオンライン会議の入門書

「テレワーク時代の新しい働き方」という副題が示すとおり、本書はコロナ禍以降、急速に普及したオンライン会議の入門書でもあります。全6章のうち2章(5~6章)が、オンライン会議に特化した内容なのです。

2つの章では、対面で行う会議と比べ、オンライン会議ではどのような点に気をつけたらよいかが、微に入り細を穿って解説されています。

また、実際に活用して効果があった「オンライン会議ツール」と、その具体的な使い方も紹介されています。

コロナ禍の始まりから2年以上を経て、いまや中小企業でもオンライン会議は活発に行われているでしょう。
そのオンライン会議をより円滑に、効果的に行うための知恵と工夫もちりばめられた一冊なのです。

越川慎司著/技術評論社/2020年12月刊
文/前原政之

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