『理念と経営』WEB記事

ニッチトップを目指すなら、 1にも2にもスピード勝負

松浦産業株式会社副社長  松浦英樹  氏

ショッピングなどで使用する紙袋の「把手」を手掛ける松浦産業。コロナ禍ではデパートの営業自粛などによって売り上げが半減した。この窮地を救ったのが、同社のニッチ商品「タックハンドル」である。

危機のなかで芽生えた好機を見逃さない

―貴社の主力商品は紙袋用把手と、タックハンドルという段ボール箱などに直接貼るシールタイプの把手。どちらもニッチ商品ですね。

松浦 1932(昭和7)年に祖父が創業したときは、わら縄の荷造りひもをつくっていました。後にひもの素材はプラスチックが中心になりますが、「ひも屋」というスタンスは昔もいまも変わっていません。紙袋用の把手もその一環で、現在は当社が国内ではトップシェアを誇っています。タックハンドル市場への参入は二番手でしたが、こちらも市場シェア95%と首位を独走中です。

―タックハンドルが後発ながら他を圧倒的に引き離している要因はどこにあるのですか。

松浦 きっかけは1989(平成元)年に酒類販売免許制度の許可基準が大幅に緩和され、スーパーに12本入りの缶ビールパックが登場したことです。最初はケースに把手がなく、お客さんはそのケースを抱えて運んでいたのですが、どうしても底に手が触れるので衛生的ではありません。しかし、既存のタックハンドルでは10㎏の重さにはなかなか耐えられない。なんとかならないかと大手ビールメーカーから相談されたのです。そこで、当社は粘着素材メーカーと共同でホットメルトという強力接着剤を開発して、耐荷重の問題をクリアしました。その後も片側だけに負荷がかからないよう把手を交差させるなど工夫を重ね、確実にシェアを伸ばしていったのです。

―今回のコロナ禍では貴社のビジネスも影響を受けましたか。

松浦 緊急事態宣言でお年寄りが買い物に出歩かなくなり、デパートも営業自粛が続いたため、紙袋を使う洋・和菓子店の需要が激減し、それまで約4億円あった紙袋用把手の売り上げが半減しました。いまは少し戻りましたが、それでもまだ6~7割です。逆に、タックハンドルはこのコロナ禍で3割ほど伸びています。

―タックハンドルが好調なのはなぜなのでしょう。

松浦 家で過ごす時間が長くなって店に行く頻度が減り、お酒や清涼飲料水などの箱買いが目立つようになったのに加え、調理器具などの電化製品、組み立て家具などを購入して持ち帰る人が増えました。そういったコロナ禍に伴う生活習慣の変化が、タックハンドルの需要増につながったとみています。その変化を見逃さず、素早く対応できたこともプラスに働いたといっていいかもしれません。

どこよりも早く、ビジネス化する

―そうするとコロナ禍が落ち着いてきたら、紙袋用把手に注力されるおつもりですか。

松浦 それもそうですが、私自身は「アドレット」という新商品に力を入れていこうと思っています。

―それはどういう商品ですか。

松浦 洋式トイレのふたの裏側に貼る消臭・抗菌・抗ウイルスのシート。ふたを閉めて流すことで細菌やウイルスを閉じ込めシート上で不活化するので、感染症が防げるのです。

取材・文 山口雅之
写真提供 松浦産業株式会社


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本記事は、月刊『理念と経営』2022年6月号「特集1」から抜粋したものです。

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